でも、売れた量は増えていない。
大伸化学の「次の利益」を探そう。
「すごい決算! じゃあ株価も上がる?」――その前に、もう一枚だけ決算書をめくってみませんか。今回の主役は、工場の塗る・刷る・洗うを支える有機溶剤メーカー、大伸化学です。
見どころは、値上げで広がった利益がどこまで残るか。株価3,000円や増配が見えてくる条件まで、数字でたどります。
まず1分。この記事の結論
出荷量はほぼ横ばい
大幅増益の中身は、単価と在庫の時間差。
モデルAの下期EPS×2
年率に直した参考計算。持続利益の確認値でも来期予想でもありません。
会社の年間配当予想
70〜88円は、連結EPSに仮に25%を掛けた記事独自の計算です。
現時点の見方:注目継続。買い増しの判断では、好決算の大きさに加え、下期の利益率と還元方針の具体化を確認したいと考えます。
読みたい順でどうぞ。仕組みを学ぶなら①〜⑥、投資判断を急ぐなら⑨ 利益の時間軸 → ⑩ 株価の条件 → ⑫ 次の決算チェックへ。
01大伸化学は、工場の「塗る・刷る・洗う」を支える会社
大伸化学は、塗料用シンナー、印刷用溶剤、洗浄用溶剤などを扱う有機溶剤の専業メーカーです。お店で買う商品の名前としては目立たなくても、ものづくりの現場では、こうした液体が働いています。
塗る
塗料を扱いやすくする溶剤。塗装工程の使い勝手や仕上がりを支えます。
刷る
印刷インキ向けの溶剤。用途や工程に合わせた液体を供給します。
洗う
製造現場で使う洗浄用溶剤。製品をつくる周辺工程も支えます。
ここで面白いのが、お客様ごとに「ちょうどいい配合」が違うこと。塗料や素材、必要な性能などに合わせて研究・開発・製造し、会社の製品ページによれば、製品情報のデータベースは約32,000種類あります。
会社は、多品種・少量の受注生産や、1Lからタンクローリーまでのさまざまなロットへの対応を説明しています。こうした積み重ねは注目点ですが、種類が多いというだけで「競争に絶対勝てる」とは言い切れません。それが利益率や顧客との取引継続に表れているかを、決算で確かめたいところです。
02最初の謎。売上38%増なのに、出荷量はほぼ横ばい
2027年3月期の第1四半期、つまり2026年4〜6月の数字を見てみましょう。見出しだけなら「絶好調!」で終わりそうですが、ここからが銘柄探検です。
売上高が前年同期比38.0%増。
製品出荷量は、何%増えたでしょう?
答えと、その理由を見る
正解はCの−0.5%。製品出荷量は33,603tで、ほぼ横ばいでした。会社は、販売単価の上昇が増収に寄与したと説明しています。
「増収=たくさん売れた」と思い込むと、読み違えてしまう決算なのです。
表は横にスクロールできます →
| 項目 | 2026年4〜6月 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 116.38億円 | +38.0% |
| 営業利益 | 9.75億円 | +522.2% |
| 純利益 | 6.79億円 | +469.1% |
| 製品出荷量 | 33,603t | −0.5% |
| EPS | 148.48円 | 前年同期26.09円 |
522.2%増は、「5.2倍になった」という意味ではありません。元の100%に増えた522.2%を足すので、前年の約6.22倍です。数字の見出しを読むときの、ちょっとした落とし穴ですね。
会社は利益面について、新規需要の開拓に加え、在庫受払差が増益要因になったと説明しています。ここを理解すると、ナフサ価格と利益の関係がぐっと見えやすくなります。
利益が増えた場所は、決算書でも見える
表は横にスクロールできます →
| 項目 | 前年同期 | 今回 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 売上総利益 | 10.87 | 19.14 | +8.27 |
| 販管費 | 9.30 | 9.38 | +0.08 |
| 営業利益 | 1.57 | 9.75 | +8.19 |
| 売上総利益率 | 12.89% | 16.44% | +3.55pt |
粗利益の増加に対し、販管費は小幅な増加にとどまりました。その結果、営業利益の伸びが大きくなっています。ただし、会社は在庫受払差の金額を個別開示していません。8.27億円の粗利益増を、すべて在庫の効果と決めつけることはできません。
出典:[1]
03在庫は「過去の仕入れ値」を連れてくる
仕入原価と販売価格は、同時に、同じ幅で変わるとは限りません。先に買った原料が在庫として残っている間に、新しい販売価格へ切り替われば、売値と原価の差が一時的に広がることがあります。
原料を買う
原油・ナフサ・為替が、溶剤の仕入価格に影響。
過去と今の原価が混ざる
主な棚卸資産は総平均法。利益に出る原価には時間差がある。
販売価格も動く
価格改定のタイミングが、値差を広げたり縮めたりする。
仕組みをつかむための概念式です。実際には製造費用・物流費などがあり、会社の会計上の営業利益をこの式だけで算出するわけではありません。
数字で見る:値差が広がるとき・縮むとき
説明用の架空例 売値110円・原価100円なら、値差は10円。売値が130円になり、平均原価がまだ110円なら、値差は20円です。
逆に、売値が110円へ戻ったのに、原価がまだ115円なら、値差はマイナス5円。原料価格の下落局面でも、一時的に苦しくなる可能性があります。
この数字は大伸化学の実際の価格ではなく、価格改定と在庫の時間差を説明するための例です。
① 高い原価の在庫を販売する一方、売値が先に下がる値差の縮小。② 在庫の収益性が落ち、帳簿価額を切り下げる棚卸資産評価損。別の現象なので区別して読みます。会社が示した「在庫受払差」だけから、どちらの金額も特定できません。
04シンナー統計を、そのまま会社に当てはめない
「シンナーが値上がりした。それなら大伸化学の売上も同じ割合で増える?」と思いたくなりますが、会社の中身を少し分解してみましょう。
単一溶剤、印刷用溶剤、特殊シンナーに加え、仕入れて販売する商品もあります。全国のシンナー統計と、大伸化学の製品構成は一致しません。業界統計は「風向き」を読む材料として使い、会社の出荷量・売値・利益率を重ねて考えます。
05原料相場は動く。「下がったから安心」で止まらない
夏までのナフサ価格下落を見て、「これからは原料安で利益が増える」と考えたくなります。でも、確認する数字にはいつの価格か、いつ届く原料かという名札が必要です。
ナフサC&F JAPAN・11月後半到着分。NAP REPORT独自評価。前営業日比+44.00ドル。
輸入ナフサの月次平均。5月の123,732円/kLから約29.2%低下。
この二つは、単位も対象期間も異なります。同じ線グラフにつないだり、直接騰落率を計算したりしません。10月13日の評価値は前営業日より上昇しており、夏の下落だけを根拠に足元の調達環境を説明するのは不十分です。
後半のEPS約353円は、10月6日に置いた数量・単価・利益率による検証モデルです。この最新ナフサ評価値を入力して自動算出した業績予想ではありません。
06シンナーの統計は、「量が弱い・価格は高い」
10月13日の統計一覧でも、詳細確報は7月、速報は8月までの掲載を確認。「最新公表」と「足元の実態」には時間差があります。
全国のシンナー統計を見ても、数量と金額を分ける大切さがわかります。確認できた詳細確報では、7月の販売数量は前年同月比13.5%減。一方、平均販売単価は29.6%高でした。
表は横にスクロールできます →
| 2026年 | 販売数量 | 平均単価・税込 | 販売金額 |
|---|---|---|---|
| 4月 | 33,034t | 315円/kg | 104.05億円 |
| 5月 | 31,014t | 356円/kg | 110.29億円 |
| 6月 | 32,659t | 363円/kg | 118.48億円 |
| 7月 | 31,306t | 345円/kg | 108.01億円 |
8月速報では、塗料の対象2区分合計の出荷が前年同月比4.1%減でした。需要環境を見る補助材料になりますが、これは塗料の統計で、シンナーそのものの数量や価格ではありません。7月のシンナー確報と、8月の塗料速報は分けて扱います。
07決算を予測してみよう。出荷量は控えめ、値差が勝負
前提が変われば、通期EPSも変わる
モデルAだけで判断しないよう、数量・単価・粗利率などを組み合わせた3ケースを並べます。全入力は計算付録に掲載しています。
| 記事の仮定 | 通期売上 | 通期営業利益 | 通期EPS | 下期EPS×2 |
|---|---|---|---|---|
| 慎重 | 419.31億円 | 17.10億円 | 261.31円 | 135.84円 |
| モデルA | 448.83億円 | 23.48億円 | 353.35円 | 248.92円 |
| 強気 | 470.81億円 | 28.91億円 | 431.74円 | 349.72円 |
この範囲に収まる確率を推定した表ではありません。慎重ケースでも、さらに悪い結果はあり得ます。下期EPS×2は季節性を無視した参考年率で、来期予想ではありません。入力値は10月6日設定、10月13日再計算。
ここからは会社の発表値ではなく、この記事の独自試算 です。第1四半期の実績を固定し、残りの期間の数量、製品単価、商品等売上、粗利率、販管費を置いて積み上げます。
このモデルの日付:入力設定 10月6日/計算検証 10月13日。10月13日のナフサ評価値を直接代入した最新業績予想ではありません。
記事モデルAの製品出荷量は、中間期65,853t、通期133,503t。前年に対して中間期は約3.0%減、通期は約3.5%減を想定します。数量の急拡大に頼る予測ではありません。
表は横にスクロールできます →
| 記事モデルA | 4〜6月 実績 | 7〜9月 予測 | 10〜3月 予測 |
|---|---|---|---|
| 製品出荷量 | 33,603t | 32,250t | 67,650t |
| 製品単価・税抜 | 約297円/kg | 289円/kg | 285円/kg |
| 商品等売上 | 約16.64億円 | 15.45億円 | 31.00億円 |
| 売上総利益率 | 16.44% | 13.8% | 12.3% |
| 販管費 | 9.38億円 | 9.60億円 | 19.20億円 |
モデルA:中間期EPSは約229円
表は横にスクロールできます →
| 中間期 | 会社予想 | 独自試算・モデルA |
|---|---|---|
| 売上高 | 206.90億円 | 225.03億円 |
| 営業利益 | 14.00億円 | 15.15億円 |
| 純利益 | 8.90億円 | 10.47億円 |
| EPS | 194.53円 | 228.89円 |
記事モデルAの中間期営業利益は、会社予想を約8.2%上回る水準です。EPSの差には利益額だけでなく、予測に用いた税率と会社計画の実効税率の違いも影響します。
モデルA:通期EPSは約353円
表は横にスクロールできます →
| 通期 | 前期実績 | 会社予想 | 独自試算・モデルA |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 346.06億円 | 384.70億円 | 448.83億円 |
| 営業利益 | 11.70億円 | 19.60億円 | 23.48億円 |
| 経常利益 | 12.36億円 | 20.30億円 | 24.32億円 |
| 純利益 | 8.89億円 | 12.80億円 | 16.17億円 |
| EPS | 194.39円 | 279.77円 | 353.35円 |
会社予想は2026年8月7日時点。予測期間の税率は34%、株式数は4,575,177株、特別損益ゼロと仮定。純利益は親会社株主に帰属する利益です。中間期実績は今回確認した開示一覧に未掲載。
表は横にスクロールできます →
| 下期=2026年10月〜2027年3月 | 会社計画から逆算 | 記事モデルA |
|---|---|---|
| 売上高 | 177.80億円 | 223.80億円 |
| 営業利益 | 5.60億円 | 8.33億円 |
| 営業利益率 | 3.15% | 3.72% |
| EPS(6カ月分) | 約85円 | 約124円 |
記事モデルAは、下期売上が会社の想定より約26%多く、営業利益率も高い前提です。「数量は保守的」という説明だけでは不十分。単価や商品等売上も含めて、会社計画との差を確かめます。
08粗利率が1ポイント違うと、EPSは約32円動く
利益予測で効くのは、売上高の大きさだけではありません。記事モデルAの下期売上高は約223.80億円。この売上に対して粗利率が1ポイント違えば、営業利益は約2.24億円動きます。
税率34%などを同じにすると、通期EPSへの影響は約32.29円。「たった1ポイント」でも、株価を考えるときには見逃せない差です。
ゆずママの利益実験室
記事モデルAの数量・売上・販管費などを固定し、下期の売上総利益率だけを変えます。
下の数値は初期条件の計算例です。操作欄が表示されない場合も、表で条件ごとの差を確認できます。
下期EPS×2は「同じ半年が2回なら」という計算です。来期の業績を予測していません。ここで変えた数値は、後の株価計算には自動反映しません。
下期粗利率12.3%を前提とした独自試算
表は横にスクロールできます →
| 下期粗利率 | 通期営業利益 | 通期EPS | 下期EPS×2 |
|---|---|---|---|
| 11.3% | 21.24億円 | 321.06円 | 184.35円 |
| 12.3%(モデルA) | 23.48億円 | 353.35円 | 248.92円 |
| 13.3% | 25.71億円 | 385.63円 | 313.49円 |
また、製品1kgあたりの売値と原価の差が1円違うだけでも、下期の数量67,650tなら営業利益は約0.68億円、EPSは約9.76円変わります。数量が大きい会社では、1円の積み重ねが効くのです。
粗利率の感度と1kgあたり値差の感度は、同じ利益改善を別の見方で表したものです。両方を足し合わせて利益を上乗せしません。
出典:[M]
09通期353円と、下期を2倍した249円。何が違う?
249円は「実力として確認済みのEPS」ではありません。モデルAの下期124.46円を2倍した数字です。季節性と翌期の数量・売値・原価が未検証のため、将来の持続利益とは区別します。
同じ会社でも、どの利益に何倍を掛けるかで株価の見え方が変わります。とくに今回は第1四半期の好調さが、通期の数字を押し上げている点が大切です。
棒の共通スケールは0〜400円。下期を2倍した数値は「今の仮定が1年続くとしたら」という参考計算です。季節性や翌期の原料・販売環境を予測したものではありません。
表は横にスクロールできます →
| EPSの見方 | 会社計画ベース | 記事モデルA |
|---|---|---|
| 通期 | 279.77円 | 353.35円 |
| 上期 | 194.53円 | 228.89円 |
| 下期(通期−上期) | 85.24円 | 124.46円 |
| 下期を2倍した参考年率 | 170.48円 | 248.92円 |
10株価3,000円は「目標」より「条件」で考える
3,000円という数字自体は、計算できます。ただし、単年の利益に掛けるのか、継続して稼ぐ利益に掛けるのかで、投資仮説は変わります。
約3,000円。ただし1Qの好調を含む今期の試算。来期の実力を確認した値ではありません。
3,000円。持続EPS300円への確信、利益の安定性や還元を評価する材料が必要です。
PER9倍なら必要なEPSは約333円。一方、持続EPS250円で3,000円を説明するにはPER12倍が必要です。利益と評価倍率の両方を上げるなら、それぞれの根拠を確認します。
表は横にスクロールできます →
| 説明用ケース | 仮定EPS | 仮定PER | 計算株価 | 2,279円比 |
|---|---|---|---|---|
| 利益の反動が強い | 170円 | 7倍 | 1,190円 | −47.8% |
| 持続利益が250円 | 250円 | 9倍 | 2,250円 | −1.3% |
| 利益と還元の改善 | 300円 | 10倍 | 3,000円 | +31.6% |
| 高収益の定着 | 350円 | 10倍 | 3,500円 | +53.6% |
上表は持続利益を仮定した感応度分析。EPS・PERはこの記事の判断用の仮定で、統計的な適正値ではありません。値幅は配当・税金・手数料を含みません。基準株価は2026年10月9日終値2,279円。1,190円も下限ではなく、前提次第でさらに下がります。
あなたの見方で、株価の条件を計算
初期値のEPS250円・PER9倍は、判断の練習用に置く仮定です。持続利益が250円と確認されたわけではありません。前の利益実験室とは独立しています。
下の数値は初期条件の計算例です。操作欄が表示されない場合も、表で条件ごとの差を確認できます。
−1.3%
実績BPSに対するPBR
0.57倍
PBRと騰落率は、10円単位に丸めた表示株価で算出。BPSは決算短信から再計算した3,922.14円。入力値は外部へ送信しません。
11現金111億円の、もう半分の物語
現預金は約111億円。基準株価での時価総額は約105億円。この組み合わせは確かに目を引きます。ここで一歩進めて、お金が増えた理由と、これから払うお金も見てみましょう。
表は横にスクロールできます →
| 項目 | 2026年3月末 | 2026年6月末 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 現金及び預金 | 93.42 | 111.43 | +18.01 |
| 売上債権 ※1 | 93.94 | 104.59 | +10.65 |
| 棚卸資産 ※2 | 10.92 | 13.66 | +2.74 |
| 仕入債務 ※3 | 73.39 | 96.64 | +23.25 |
| 短期借入金 | 0.00 | 3.00 | +3.00 |
※1 受取手形・売掛金+電子記録債権。※2 商品及び製品+原材料及び貯蔵品。※3 買掛金+電子記録債務。
現預金から短期借入金3億円だけを引くと約108.43億円ですが、これは借入金のみを控除した参考値です。その他に含まれるリース等を含めた厳密なネットキャッシュや、すべて配当に回せる余剰現金を意味しません。
表は横にスクロールできます →
| 項目 | 数値 | 定義 |
|---|---|---|
| 基準株価 | 2,279円 | 2026年10月9日終値 |
| 時価総額 | 約104.65億円 | 2,279円×発行済4,592,000株 |
| BPS | 3,922.14円 | 6月末純資産÷自己株式控除後株数 |
| PBR | 約0.58倍 | 2,279円÷3,922.14円 |
| 会社予想配当利回り | 約1.97% | 45円÷2,279円 |
BPSは決算短信の純資産17,944,487千円÷4,575,177株で再計算。EPS計算と同じ株数基準を用いています。
資産の宝探しでは「同じ宝を二度数えない」
有価証券報告書では、土地・保有株式・賃貸不動産の注記も確認したい項目です。大伸化学では、例えば次の資産が確認できます。
表は横にスクロールできます →
| 資産 | 帳簿価額 | 読み方 |
|---|---|---|
| 越谷工場・兵庫工場の土地 | 合計約18.93億円 | 主要2工場の事業用土地。売却可能な余剰土地という意味ではない |
| 純投資目的以外の保有株式 | 合計約7.74億円 | 非上場約1.54億円+非上場以外約6.20億円 |
これらの帳簿価額は、すでに純資産に含まれています。足すなら検証できる時価との差額を、税金・処分費用・事業で使う必要性まで考慮して評価します。市場価格のあるその他有価証券は時価評価されるため、取得原価との差をそのまま純資産へもう一度足しません。今回は土地の独自時価査定をしていないため、含み益を株価に上乗せしていません。
配当45円が会社予想。70〜88円は、どんな計算?
この表は、連結EPSに仮に25%を掛けた参考計算です。会社の配当算定式を再現したものではありません。増配を決めた発表とも区別します。
会社の公表予想は年間45円。配当性向25%程度を目安とする方針はありますが、「EPSが出たら必ず25%が配当になる」という自動計算の約束ではありません。
表は横にスクロールできます →
| 利益の仮定 | 計算上の配当 | 2,279円に対する利回り |
|---|---|---|
| 会社EPS279.77円 | 約70円 | 約3.07% |
| EPS320円を仮定 | 80円 | 約3.51% |
| 記事モデルA・EPS353.35円 | 約88円 | 約3.86% |
利回りは表の整数配当額で計算。会社予想45円÷連結EPS279.77円で計算した比率は約16.1%。増配余地を考える入口になりますが、配当の変更は未決定です。
配当性向の「単体」と「連結」、何が違う?
12次の決算、最初の5分でここを見る
次の決算では、上方修正の有無だけを見るより、7〜9月の単独成績を出すと変化が見えます。中間期累計から4〜6月の実績を引くだけです。
表は横にスクロールできます →
| 確認項目 | 比較する目安 | 判断が変わるポイント |
|---|---|---|
| 7〜9月の営業利益 | 会社計画の逆算:約4.25億円 記事モデルA:約5.39億円 | 数字に加え、単価・数量・在庫要因の説明を見る |
| 7〜9月の粗利率 | 記事モデルA:13.8% | 会社目標ではない。累計の粗利益・売上を差し引いて単独期を計算 |
| 中間期の製品出荷量 | 記事モデルA:65,853t | モデルの約3%減よりも需要が弱くなっていないか |
| 下期の利益計画 | 現行計画の逆算:営業利益5.60億円 | 上期だけの上振れか、下期も引き上げるか |
| 配当・中期計画 | 配当予想45円、計画は策定中 | 増配額、資金の使い道、収益目標と期限が具体化するか |
| 営業CF・運転資金 | 6月末は売上債権・仕入債務とも増加 | 売掛金の回収、仕入債務の支払い、在庫の増減を確認 |
評価を上げる材料
数量が想定内に収まり、在庫効果が弱まっても利益率を維持。下期の利益計画や増配・資本配分が具体化する。
評価を下げる材料
売値が先に下がり粗利率が縮小。数量減と在庫増が重なり、来期の利益や現金創出力に不安が残る。
中期経営計画について、7月1日のガバナンス報告書は策定中と説明しています。ROE8%以上や配当性向25%程度などの方針はありますが、発表日・増配・自社株買い・TOBを決定事項として扱いません。
売買では板の厚さにも注意が必要です。10月9日の出来高は3,900株。小型株では、表示株価で希望数量を売買できるとは限りません。資産価値だけでなく、換金のしやすさも保有量を考える材料になります。
13よくあるギモンを、ここで解消
ナフサが下がれば、必ず増益しますか?
販売価格と在庫原価の動く速さ次第です。売値が先に下がれば値差が縮みます。数量、売値、原価をセットで見ます。
EPS353円は会社の予想ですか?
会社の通期EPS予想は279.77円です。約353円は10月6日に置いた仮定による記事モデルAの計算結果で、10月13日の市況を直接反映した最新予想ではありません。
下期の年率EPS249円は、来期予想ですか?
違います。記事モデルの下期EPS124.46円を2倍した点検用の数値です。季節性や翌期の相場が変わるため、持続利益が249円と確定したわけではありません。
株価3,000円は実現しますか?
将来株価は確定できません。例えば持続EPS300円×PER10倍なら3,000円ですが、両方に根拠が必要です。利益や評価倍率が下がれば、基準株価を大きく下回るケースもあります。
80円や88円への増配は決まっていますか?
決まっていません。会社予想は45円です。80円はEPS320円×25%、約88円は記事モデルのEPS約353円×25%という試算です。
なぜ今日の株価を使わないのですか?
比較の再現性を優先し、記事検証日の前営業日である2026年10月9日の確定終値2,279円を使います。価格は自動更新されません。
14ゆずママの結論:好決算の「次」を買えるか
大伸化学には、顧客に合わせた配合と供給の積み重ね、厚い資産、還元を考える余地があります。一方、今回の大幅増益をそのまま来期へ延長するには、確認したいことが残っています。
- 事業を見る:有機溶剤の配合・供給が、顧客のものづくりを支える。
- 利益を見る:売上金額だけでなく、数量と値差。1Qの追い風がどこまで残るか。
- 株価を見る:今期のEPSと持続利益を分け、3,000円に必要な条件を逆算する。
- 還元を見る:現預金の厚さに加え、運転資金と会社の意思決定を確認する。
「次も稼げそう?」を。
私の評価は注目継続。利益の持続性と還元の具体化がそろえば、評価を見直したい銘柄です。予想を当てること以上に、外れたときに考え直せる観察項目を持っておきます。
あなたなら、次の決算で最初に見るのは数量・粗利率・下期予想・配当のどれでしょう? その理由まで考えると、自分の「買いたい条件」がはっきりしてきます。
もう一歩、バリュー株の見方を深める
本記事は公開資料に基づく銘柄研究です。筆者の仮定や評価は将来の利益・配当・株価を保証せず、特定の取引を推奨するものではありません。株価指標の基準日は固定しています。
15出典・基準日・計算前提
数値をたどれるよう、会社資料と統計の確認先をまとめました。記事の更新日と、各データの対象期間は異なります。
数字の日付を確認する
| 項目 | 基準 |
|---|---|
| 株価・出来高 | 2026年10月9日終値 |
| 1Q実績・期末BPS | 2026年6月末/4〜6月 |
| 会社予想・年間配当 | 2026年8月7日公表 |
| 利益モデルの入力 | 2026年10月6日設定・10月13日再計算 |
| ナフサの到着分評価 | 2026年10月13日10:00時点 |
| シンナー詳細統計 | 2026年7月確報まで |
表紙、添付2〜5・7頁。1Q実績、会社予想、配当、貸借対照表、株式数を確認。BPSは本文記載の純資産と自己株式控除後株数から再計算。
決算短信PDF ↗前期の業績と製品出荷138,346tを確認。 表紙の連結EPS194.39円と連結配当性向23.1%も確認。
前期決算PDF ↗約32,000種類の製品情報データベース、顧客別の開発・製造。会社Webサイトを10月13日確認。
オーダーメイド製品 ↗経済産業省統計の集計。数量・販売金額・税込平均単価を各月PDFで照合。全国シンナー統計を会社の全製品と同一視しない。
統計一覧 ↗塗料2区分の合計を需要の補助材料に使用。シンナー自体の速報ではない。
8月速報PDF ↗10月13日午前10時:11月後半到着1,001.50ドル/t、前営業日比+44.00。3〜7月輸入価格は確報、8月87,550円/kLは速報。更新型ページのため後日表示は変わる。
市況・輸入統計 ↗主要設備の事業用土地、純投資目的以外の保有株式、商品・製品・原材料の総平均法、市場価格のあるその他有価証券の時価評価を確認。土地の独自時価評価は実施していない。 PDF3頁の単体EPS、24頁の配当方針・前期配当性向24.0%を併せて確認。
有価証券報告書PDF ↗前年中間期製品出荷67,875tとの比較。
前年中間期PDF ↗2026年10月9日終値2,279円・出来高3,900株を10月13日確認。PER・PBR・利回りは記事で再計算。
日付別の株価 ↗1〜2頁:中計策定中・経常利益率5%程度、4頁:ROE8%以上・配当性向25%程度の方針。発表日・将来配当を確定した記載ではない。
ガバナンス報告書PDF ↗10月6日版の仮定を10月13日に再計算。各ケースは入力条件の違いを示します。353.35円は統計的な最頻値ではなく入力仮定の結果です。会社計画の下期は「通期−中間期」、7〜9月は「中間期−1Q実績」で逆算。年率換算は来期予想ではありません。
表示は本文で丸め、計算付録では精度を維持。株価の計算はEPS×PER、PBRは株価÷BPS、配当利回りは配当÷株価。会社予想・独自試算・説明用仮定を区別します。
計算を確かめる:数式と3ケースの全入力
金額は以下の前提表では百万円。製品売上=数量t×単価円/kg÷1,000。総売上=製品売上+商品等売上。営業利益=総売上×粗利率−販管費。経常利益=営業利益+営業外損益。将来期間の純利益=経常利益×66%。EPS=純利益×1,000,000÷4,575,177株。
実績4〜6月の営業利益975.340百万円・純利益679.305百万円は固定。将来の特別損益ゼロ、税率34%を仮定。
表は横にスクロールできます →
| ケース・期間 | 数量t | 円/kg | 商品等売上 | 粗利率 | 販管費 | 営業外 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 慎重 7〜9月 | 30,900 | 275 | 1,450 | 12.7% | 970 | 18 |
| 慎重 下期 | 64,800 | 270 | 2,850 | 11.8% | 1,960 | 30 |
| モデルA 7〜9月 | 32,250 | 289 | 1,545 | 13.8% | 960 | 18 |
| モデルA 下期 | 67,650 | 285 | 3,100 | 12.3% | 1,920 | 30 |
| 強気 7〜9月 | 33,200 | 300 | 1,650 | 14.5% | 950 | 18 |
| 強気 下期 | 69,200 | 296 | 3,350 | 13.1% | 1,940 | 30 |
モデルA・中間期:売上22,502.946、営業利益1,514.7445、純利益1,047.19197百万円。通期:売上44,883.196、営業利益2,347.51525、純利益1,616.620665百万円。丸め前EPSは中間期228.88556円、通期353.34604円。
下期年率EPS=569.428695百万円×2×1,000,000÷4,575,177株=248.92095円。下期粗利率1ポイントの利益感度=22,380.25百万円×1%=223.8025百万円。
本文の2つの操作欄は独立。ページを開き直すと初期値に戻ります。価格と利益の統計的な連動係数は推定していません。
