決算書の向こうに、
銀行の「稼ぐ力」が見えてくる。
利益・預金・貸出・含み損。そして、普通株主の取り分を左右する優先株まで。宮崎太陽銀行の開示資料を使って、ひとつずつ読み解きます。
「増益」の中身を見抜く。含み損と資本を混同しない。優先株がEPS・BPS・将来の株数に与える影響をつかむ。読んだあと、自分で資料を確かめられるところまで一緒に進めます。
01銀行株を見る「5つの窓」を手に入れよう
こんにちは、ゆずママです。「金利が上がるから銀行株に追い風」「PBRが低いから割安」——そんな話を聞いて決算書を開いたら、見慣れない言葉がずらり。そこで閉じてしまうのは、もったいない! 銀行の決算は、見る順番を決めると、数字のつながりがぐっと分かりやすくなります。
この記事のゴールは、難しい用語を暗記することではありません。増益の理由を説明できること、悪材料がどこから来るか想像できること、普通株主の取り分を計算できること。この3つです。
稼ぐ力
貸出や運用の利息、手数料、経費。毎年繰り返せる利益はどれくらい?
預金と貸出
資金を集める力と貸す力。量だけでなく金利・構成・信用力も確認。
損失への備え
不良債権、債券の含み損、資本、流動性。逆風をどこまで吸収できる?
普通株主の取り分
優先配当を引いた利益、普通株のBPS、将来増える可能性がある株数。
価格と変化のきっかけ
割安に見える理由は何か。その理由が変わる根拠はあるか。
実例には宮崎太陽銀行(証券コード8560)を使います。宮崎銀行(8393)とは別の会社です。銀行の優劣や売買を断定する記事ではなく、実際の開示資料を使って分析の手順を身に付ける記事として読んでください。
数字の基準は主に2026年3月期と2026年6月末。各表に「単体・連結」「年間・四半期」「単位」を表示します。計算例と実績値は区別し、株価は現在値と誤解されないよう自動取得していません。
02銀行の商売は「預かる・貸す・支える」
銀行は、お客さまから預金を預かり、企業や個人に貸し出し、決済や資産運用などのサービスを提供します。図の左側は資金を集める仕事、右側は資金を使って収益を得る仕事です。
銀行から預金利息を受け取る
貸出利息などを受け取る
銀行に貸出利息を支払う
たとえば、平均的に100億円を年2%で貸し、同じ100億円を年0.5%で調達すると、利息の差は年1.5億円。ただし、ここから人件費・システム費・店舗費・貸倒れに備える費用などを賄います。利息の差がそのまま最終利益になるわけではありません。
もう一つの柱は手数料です。振込・決済・保証・事業承継・M&A・資産運用の相談などで収益を得ます。預金と貸出の間に立つだけでなく、地域や企業の困り事を解決する仕事も銀行の収益源になっています。
銀行を見るときは「お金の仕入れ値」と「お金の運用先」の両方を見ましょう。貸出金利が上がっても、預金の調達コストがそれ以上に増えれば、利ざやは縮んでしまいます。
一般企業の「ネットキャッシュ株探し」を、そのまま持ち込まない
銀行にとって預金は、返還義務を負う負債です。貸出金は、将来返してもらう資産です。一般企業のように「現金が多い」「借入が少ない」だけでは評価できません。現金預け金は決済や払い戻しへの備えでもあり、自由に普通株主へ配れる余剰資金とは限らないのです。
035つの利益を、一本の道ではなく「二つの見方」で読む
銀行の利益には、損益計算書に載る会計上の数字と、銀行業務の実力を説明するための管理指標があります。この二つを、ぴったり同じ範囲の数字だと思わないことが大切です。
| 名前 | ざっくりした意味 | 見るときの注意 |
|---|---|---|
| 経常収益 | 利息・手数料などの収入の合計 | 一般企業の売上高に近い入口。ただし売上と同じ構造ではない |
| 業務粗利益 | 銀行業務で得た収益と対応する費用の差額 | 資金利益・役務利益などの合計。連結粗利益とは範囲が違う場合がある |
| 業務純益 | 業務粗利益から経費・一般貸倒引当金繰入額などを差し引いた利益 | 国債等債券損益の影響を含む。各行の定義を確認 |
| 経常利益 | 通常の企業活動による収益と費用の差額 | 株式関係損益や信用コストの影響も受ける |
| 当期純利益 | 特別損益と税金などを経た最終利益 | 連結では「親会社株主に帰属する」利益を確認する |
会計のルート
経常収益 − 経常費用
= 経常利益
そこに特別損益・税金などを反映して最終利益へ。
銀行業務を分析するルート
業務粗利益 − 経費
= 実質業務純益
債券損益などを調整して、本業の変化を見やすくする。
「経常収益から資金調達費用を引けば業務粗利益になる」とだけ覚えると、範囲の違いを落とします。その他経常収益に含まれる貸倒引当金戻入益や株式売却益など、業務粗利益の外にある項目にも注意してください。
純利益だけでは見えない「増益の中身」
純利益が増える経路は一つではありません。貸出利息が増えたのか、経費が減ったのか、保有株の売却益が出たのか、以前積んだ引当金が戻ったのか。同じ増益でも、翌期に繰り返せるかどうかは違います。そこを調べるのが、ここから先の作業です。
04利益を3つに分けると、銀行の性格が見えてくる
業務粗利益は、まず3つの箱に分けて考えると理解しやすくなります。厳密には特定取引利益・信託報酬などを分けて表示する銀行もあるため、実際の比較では各行の開示区分を使います。
① 資金利益
貸出・有価証券・預け金の利息などから調達費用を引いた利益。貸出先と運用資産の質が土台。
② 役務取引等利益
決済・保証・相談などの収益から対応する費用を引いた利益。収入と利益を取り違えない。
③ 特定取引・その他業務利益
為替取引や債券関係損益など。取引の性格は幅広く、一括して投機と決めつけない。
資金利益は「貸出だけ」の利益ではない
有価証券の利息や株式配当、日銀などへの預け金の利息も入ります。資金利益が大きい銀行を見て、すべて地元企業への融資で稼いだと受け取るのは早計です。貸出・有価証券・預け金のどれが増えたのかを損益計算書で確かめましょう。
手数料が増えれば、いつも安定する?
決済など継続性の高い取引は安定収益につながりやすい一方、投資信託の販売やM&Aの成約は市況・案件数で振れます。役務利益は「多ければ無条件に良い」ではなく、継続性・顧客満足・関連コストまで確認して初めて評価できます。
その他業務利益がゼロでも、リスクはゼロではない
売買が少なければ、その期の実現損益は小さくなります。しかし、保有し続けている債券に含み損が生じている可能性はあります。損益計算書は期間の成績、貸借対照表と注記は期末の持ち物。必ずセットで読みます。
赤字項目をすぐ悪者にせず、黒字項目もすぐ褒めない。どの取引から生まれた数字なのかを一段だけ深掘りすると、見え方が変わります。
05コア業務純益で「繰り返し稼ぐ力」をつかむ
債券の売却損益や貸倒引当金の計上タイミングを調整し、銀行業務の基礎的な収益力を見る指標がコア業務純益です。一般的な関係は次のように整理できます。
コア業務純益 = 実質業務純益 − 国債等債券損益一般的な整理。信託勘定の償却等を調整する場合など、銀行ごとの定義・注記を優先します。
たとえば実質業務純益が20億円、債券損益が▲5億円なら、コア業務純益は20−(▲5)=25億円です。損失を除くので足し戻します。ここで符号を逆にしないようにしましょう。
実例:宮崎太陽銀行の2026年4〜6月
| 単体・単位:百万円 | 前年同期 | 当期 | 読み取り |
|---|---|---|---|
| 資金利益 | 2,632 | 2,786 | 貸出利息などの増加が寄与 |
| 役務取引等利益 | ▲43 | ▲2 | 改善したが、なおわずかにマイナス |
| その他業務利益 | ▲62 | ▲0 | 表示単位未満のマイナス |
| 業務粗利益 | 2,526 | 2,784 | 収益の土台が拡大 |
| 経費(臨時処理分を除く) | 2,001 | 2,015 | 経費も増加 |
| コア業務純益 | 588 | 769 | 約30.8%増(表示値で計算) |
| 貸倒引当金戻入益 | ― | 176 | 信用コストの改善も利益を押し上げた |
| 単体の経常利益 | 579 | 1,021 | 本業と信用コストの両方が改善 |
出典:資料2 / PDF12ページ/本文9ページ。金額は資料の表示単位で丸められています。
本業の改善は確認できます。同時に、貸倒引当金戻入益も出ています。したがって、経常増益をすべて金利効果と説明するのは正確ではありません。本業改善と引当金戻入を別々に見ることで、翌期の予想に使う利益を選べます。
横軸:利益額。縦方向:項目と期間。2026年4〜6月と前年同期、単体。資料2。
会社資料は百万円未満を切り捨てているため、表示値同士の差と会社記載の増減額が1百万円ずれる場合があります。本記事の計算値は、計算に使った表示値を明示しています。
出典:資料6 / コア業務純益の定義に関する基礎説明。金額は資料の表示単位で丸められています。
06預金は「増えた・減った」より、中身と集め方
貸出金が伸びても、預金が増えなければ貸出余力がすぐゼロになるわけではありません。有価証券を現金化したり、市場から資金調達したりする方法もあります。ただし、その調達費用や安定性が変わります。預金は銀行の営業基盤と資金調達力を見る窓です。
| 見る項目 | 着眼点 | 見落としやすいこと |
|---|---|---|
| 末残と平残 | 期末の残高と、期間中の平均残高を並べる | 期末だけ増えても、その年度の利息収支への寄与は限られる |
| 個人・法人・公金 | 誰から集めているか、集中していないか | 大口資金の移動や季節性で期末残高が動く |
| 流動性・定期性 | 普通預金等と定期預金等の構成 | 低コスト預金から定期へ移ると調達費用が増え得る |
| 金利と獲得コスト | 残高増加に見合う費用か | 高金利キャンペーンで集めた預金が満期後に残るか |
| 地域・顧客との関係 | 給与振込、決済、相続対応など | 口座数が多くても実際に使われているとは限らない |
実例:末残は増えたのに、平残は減った
添付有報では、2026年3月期の単体預金平残は7,677億円で、前年の7,695億円から18億円減少しています。一方、決算説明資料の単体預金末残は、7,623億円から7,749億円へ増加しています。どちらも同じ銀行の数字ですが、答えている質問が違います。
末残は「決算日にどれだけあったか」、平残は「年度を通じてどれくらい使えたか」。資金利益の分析では平残、期末時点の規模や資金構成の確認では末残、という使い分けが基本です。
出典:資料1 / 22ページ。末残の補足は資料3・PDF10ページ。金額は資料の表示単位で丸められています。
連結の流動性預金は2025年3月末の535,432百万円から2026年3月末は522,247百万円へ減少し、定期性預金は224,545百万円から250,296百万円へ増加しています。預金全体が増えても、内訳は動いています。この事実だけで流出危機とは言えませんが、調達コストを点検するきっかけにはなります。
出典:資料1 / 19ページ。金額は資料の表示単位で丸められています。
預金は量だけでなく、集めるためにいくら払っているかが大事。「お客さまとの長いお付き合い」が、数字では調達コストの差になって表れることがあります。
07貸出金は「誰に・何のために・どんな条件で」
貸出残高の増加は収益につながる可能性がありますが、無理に貸出を増やして信用リスクを抱えれば、後から利益が消えます。残高、金利、信用力の3点を一緒に見ます。
不動産関連の比率は、重要な入口
有報の「業種別貸出状況」を探し、不動産関連の比率と増加速度を確認します。ただし「30%を超えたら危険」といった万能な境界線はありません。賃貸住宅、商業施設、開発案件ではリスクが違い、担保・保証・借り手の返済原資も異なります。
2026年3月末・連結。横軸:貸出全体に対する比率。主な業種のみ抜粋し、全体合計は100%になりません。「不動産業,物品賃貸業」を一つの開示区分として表示。資料1・19ページ。
同開示区分は前年の19.26%から20.62%へ1.36ポイント上昇しています。残高は106,709百万円から115,652百万円へ増加。ここから導けるのは「確認を深めたい」という判断です。この区分だけで、すべてが投機的な不動産開発融資だとは言えません。
出典:資料1 / 19ページ。金額は資料の表示単位で丸められています。
さらに一段深く読むなら
- 増加先:残高の伸びが高金利・高リスク案件に偏っていないか。
- 返済原資:賃料・営業キャッシュフローで返す融資か、売却代金頼みの融資か。
- 条件:変動金利か固定金利か、金利改定はいつか。
- 集中:一つの大口先・業種・地域への依存は高くないか。
- 担保:担保があるだけで安心せず、処分価値の下落も考える。
開示だけでは分からない点は「未確認」と書けば十分です。分からないことを、安心材料に置き換えない姿勢が分析の質を高めます。
08不良債権と与信費用は「残高」と「今期の費用」
不良債権比率は期末に残っている問題債権の状態、与信費用はその期の利益にどれだけ負担がかかったかを表します。同じ方向に動くとは限らず、どちらか一方では十分に読めません。
| 指標 | 何が分かる? | 一緒に調べたいこと |
|---|---|---|
| 金融再生法開示債権比率 | 総与信に占める開示債権の割合 | 破産更生・危険・要管理の内訳、増減要因 |
| 与信費用・信用コスト | 貸倒れや引当てが当期利益に与えた影響 | 回収・戻入による一時改善、定義の違い |
| 引当金・保全状況 | 損失への会計上の備えや担保・保証 | 引当率の対象範囲、担保価値、回収見通し |
| 信用コスト率 | 貸出規模に対する費用負担の大きさ | 平残か末残か、年率換算の有無を合わせる |
宮崎太陽銀行の例:前期末比の改善と、前年からの悪化は両立する
単体・部分直接償却実施後。横軸:総与信に占める開示債権の割合。資料1・22ページ、資料2・PDF13ページ。
2026年3月末の開示債権残高は182.45億円。添付有報では、要管理債権の増加が主因と説明されています。2026年6月末の比率は3.15%と前期末から低下していますが、2025年3月末より高い水準です。直近の改善だけで、過去の悪化が解消したとは言えません。
2026年3月期の単体与信費用は19.10億円。一方、翌第1四半期は貸倒引当金戻入益が出ています。戻入益は過去の見積りを見直すなどして生じる利益であり、新しい融資から利息を稼ぐのとは性格が異なります。
出典:資料1 / 22〜23ページ。四半期は資料2・PDF12〜13ページ。金額は資料の表示単位で丸められています。
「今期は戻入益があったから好調」で止まらず、「来期は通常の信用コストに戻っても稼げる?」と一歩先を考えたいですね。
09OHRは経営効率のものさし。改善理由まで読む
OHRは、業務粗利益のうち経費がどれくらいを占めるかを示す比率です。同じ定義なら、一般に低いほど経費負担が軽いと読めます。銀行統合を分析するときにも、統合費用とその後の経費改善を追う手掛かりになります。
| ケース | 粗利益 | 経費 | OHR | 起きていること |
|---|---|---|---|---|
| 前年 | 100億円 | 70億円 | 70.0% | 出発点 |
| 翌年A | 120億円 | 72億円 | 60.0% | 経費は増えたが、収益がもっと増えた |
| 翌年B | 100億円 | 60億円 | 60.0% | 収益は同じで、経費が減った |
| 翌年C | 80億円 | 56億円 | 70.0% | 比率は同じでも、事業規模が縮んだ |
宮崎太陽銀行の第1四半期で計算してみる
単体の公表値を使った本記事の簡便計算では、前年は2,001÷2,526×100=約79.2%、当期は2,015÷2,784×100=約72.4%です。経費は減っていません。今回の改善は、主に分母の業務粗利益が大きくなったことによります。
単体。横軸:OHR。会社公表のOHRそのものではなく、資料2の経費÷業務粗利益から算出。
店舗削減・人員再配置・デジタル化は費用を抑え得ますが、サービス低下や将来投資不足につながっていないかも確認します。コストを減らす力と、顧客を増やして稼ぐ力は、両方必要です。
OHRが下がったら「分母が増えた? 分子が減った?」。この一言だけで、決算コメントがずっと具体的になります。
10金利上昇は追い風。それでも銀行ごとに差が出る
金利が上がると貸出金利や再投資利回りの上昇が期待できます。一方で、預金金利の上昇、保有債券の価格下落、借り手の利払い負担増加も起こり得ます。金利上昇の恩恵と負担が、違う場所・違う時期に表れるのです。
収入への追い風
変動貸出の金利改定、新規貸出の利回り改善、有価証券の再投資利回り上昇など。
費用への逆風
預金金利や市場調達金利の上昇。普通預金から高金利の定期預金への移動も影響。
資産と信用への影響
既存の債券価格が下がる可能性。借り手の返済余力が弱まれば信用コストも増える。
数字で見ると、預金コストの重みが分かる
ここでは実在銀行の予想ではなく、仕組みを学ぶための架空例を使います。平均貸出5,600億円の適用金利が0.10ポイント上昇すれば、通年の利息増加は約5.6億円。平均預金7,800億円の金利が0.05ポイント上昇すれば、預金利息は約3.9億円増えます。
= 差引 +1.7億円残高一定・1年間すべてに適用という単純仮定。有価証券・預け金・経費・税金・信用コストは含めません。
預金残高が貸出残高より大きい銀行では、預金金利の小さな変化も大きな金額になります。貸出金利の上昇だけを掛け算して「これだけ増益」とする試算には、片手落ちになりやすいという弱点があります。
「金利感応度」を読むときの6つの質問
- 何の金利を何ポイント動かした試算か。
- 1年目の効果か、数年後の平年度の効果か。
- 貸出と預金の金利への反映率をどう置いたか。
- 残高増減や有価証券の入替えを想定しているか。
- 円貨だけか、外貨も含むか。利益のどの段階か。
- 信用コストや債券評価の変化まで含めているか。
預金ベータは、市場金利や政策金利の変化に対する預金金利の追随度をみる考え方です。たとえば政策金利が0.25ポイント、預金金利が0.05ポイント上がる仮定なら単純な追随度は20%。実際の計測期間と対象金利によって値は変わります。
添付写真の特定の銀行に関する「+25bpsの増益額」は、宮崎太陽銀行の試算として転用していません。銀行が違えば残高・金利改定・預金構成も違うためです。1bp=0.01%ポイント、25bps=0.25%ポイントです。
11デュレーションは「金利への敏感さ」を読む鍵
債券の残存期間は、満期まであと何年か。一方、デュレーションは利払いと元本返済の時期・金額を現在価値で加味した指標です。クーポンを途中で受け取る債券では、通常、満期までの年数と同じにはなりません。
価格変化の近似に使うのは主に修正デュレーションです。利回りが少し変化したときに、債券価格がどれくらい動くかを表します。
| 修正デュレーション | 利回り+0.25pt | 利回り+0.50pt | 利回り+1.00pt |
|---|---|---|---|
| 2年 | 約▲0.5% | 約▲1.0% | 約▲2.0% |
| 4年 | 約▲1.0% | 約▲2.0% | 約▲4.0% |
| 6年 | 約▲1.5% | 約▲3.0% | 約▲6.0% |
1,000億円の債券を保有し、修正デュレーションが4年、利回りが0.5ポイント上がるなら、価格減少は約2%=20億円という目安になります。ただし実際にはイールドカーブの形、信用スプレッド、ヘッジ、期限前償還なども影響します。
入力して実感:債券価格への影響
教育用。宮崎太陽銀行の実際のデュレーションを示すものではありません。
自動計算が有効になると、入力変更で結果が更新されます。上の表でも確認できます。
期間だけで危険度を決めない
「4年なら危険」「2年なら安全」という線引きはできません。保有金額、資本との比率、負債側の性質、ヘッジを含む銀行勘定全体を合わせて見ます。同じデュレーションでも、資本に対してどれだけ多く持つかで負担は変わります。
また、修正デュレーションと銀行の開示する平均残存年数は同じではありません。資料が「平均残存年数」と書いている場合、それを修正デュレーションとみなして精密な試算を作らないようにします。
12「自己資本比率」は、まず分母とルールを確認
銀行の決算短信の表紙には、一般企業と同じように自己資本比率が記載されます。しかし、それが銀行の健全性規制に使う比率とは限りません。名称が同じでも、計算の土台が違います。
| 区分 | 大まかな計算 | 読み取るもの |
|---|---|---|
| 会計上の自己資本比率 | 会計上の自己資本 ÷ 総資産 | 貸借対照表上、資産のうちどれだけが自己資本か |
| 規制上の自己資本比率 | 規制上の自己資本 ÷ リスクアセット | 資産等のリスクを考慮した資本の充実度 |
| 普通株主のBPS | 普通株式に帰属する純資産 ÷ 期末普通株数 | 普通株1株に対応する会計上の純資産 |
宮崎太陽銀行の2026年6月末は、短信表紙の連結自己資本比率が5.6%、国内基準による規制上の比率が連結8.77%、単体8.83%。数字が異なるのは矛盾ではありません。
出典:資料2 / PDF1ページ・13ページ。金額は資料の表示単位で丸められています。
国内基準と国際統一基準は「会計基準の違い」ではない
これは、自己資本比率の規制上の基準の違いです。海外営業拠点などの適用要件により区分され、国際統一基準ではCET1、Tier1、総自己資本などを確認します。国内基準はコア資本を中心に計算します。
| 項目 | 国内基準 | 国際統一基準 |
|---|---|---|
| 基本的な資本の見方 | コア資本を中心に確認 | CET1・Tier1・総自己資本を分けて確認 |
| 最低水準の概略 | 自己資本比率4% | 総自己資本8%、Tier16%、CET1 4.5% |
| その他有価証券評価差額金 | 原則として評価益・評価損をコア資本に含めない | その他の包括利益を通じCET1に原則反映。規制上の調整あり |
| 共通する注意 | 会計上の純資産とは一致しない | バッファー等の追加要件も確認 |
国内基準で評価差額が規制上の資本に入らなくても、その他有価証券は会計上、原則として時価評価され、税効果を考慮した評価差額が純資産に反映されます。含み損が帳簿から消えているわけではありません。さらに、売却損や減損として損益に反映されれば、利益剰余金などを通じて規制資本にも影響し得ます。
出典:資料4 / 規制上の資本と評価差額に関する説明。最低国内比率は資料1・12ページも参照。金額は資料の表示単位で丸められています。
満期保有目的の債券は別の確認が必要
満期保有目的の債券は通常、償却原価で計上されます。時価が下がっただけでは、その差額がその他有価証券と同じ形で純資産に反映されるわけではありません。注記の時価と差額を確認します。ただし、減損が必要な場合まで損失が出ないわけではなく、保有継続の能力や資金繰りも大切です。
「規制の数字が保たれている」と「市場価格で見た損失が小さい」は別の質問です。どちらかだけで、銀行を安全とも危険とも言い切れません。
13株の含み益と、債券の含み損を分けて見よう
合計がプラスでも、内側で大きな評価損と評価益が相殺されていることがあります。次の表は、2026年6月末の宮崎太陽銀行の連結開示です。読みやすく億円に換算しました。
| その他有価証券 | 取得原価 | 時価計上額 | 評価差額 |
|---|---|---|---|
| 株式 | 60.11億円 | 208.60億円 | +148.49億円 |
| 債券 | 1,315.59億円 | 1,226.28億円 | ▲89.31億円 |
| その他 | 280.22億円 | 290.25億円 | +10.03億円 |
| 合計 | 1,655.93億円 | 1,725.14億円 | +69.21億円 |
出典:資料2 / PDF14ページ/本文11ページ。金額は資料の表示単位で丸められています。
横軸:税引前の評価差額。0より左が評価損、右が評価益。2026年6月末・連結、資料2。
これに加え、満期保有目的債券は帳簿額5億円、時価3.59億円、開示差額は▲1.40億円です。こちらは「その他有価証券」の合計69.21億円には入っていません。また、貸借対照表のその他有価証券評価差額金は48.03億円であり、税引前の69.21億円と同じ数値ではありません。
含み益は、どれくらい変化し得る?
株式の時価208.60億円が一律10%下がり、売買も他の変化もない仮定では、株式の評価差額は約20.86億円減ります。他が一定なら、その他有価証券全体の税引前差額は69.21−20.86=約48.35億円となります。これは感応度を理解する単純例で、実際の株価予想や規制資本の試算ではありません。
二つのストレスが重なる場面を考える
金利上昇で債券の評価損が増え、同時に株式相場が下がって評価益が減る場合もあります。保有株式の中身やヘッジなどを無視して直線的に予測することはできませんが、「債券は株の含み益で吸収できる」と固定的に考えないことは大切です。
14債券の損切りは、将来の利益を増やすことがある
低い利回りの債券を売って、より高い利回りの債券へ入れ替えると、その期に売却損が出る一方、その後の利息収入が増える場合があります。添付写真にある「その他業務利益の赤字」を読む視点は、ここです。
- 古い債券を売却する帳簿価格より安く売れば、売却損が当期利益に表れる。
- 回収したお金を再投資する再投資先の利回り・期間・信用リスクを比較する。
- 翌期以降の利息収入を確認する増えた収入が、実際に収益の改善につながるか追いかける。
損失回収の年数を、ざっくり計算する
帳簿100億円・年利0.5%の債券を95億円で売却し、その95億円を年利2%で再投資する架空例を考えます。売却損は5億円。利息収入は年0.5億円から年1.9億円へ増え、差額は年1.4億円です。
= 約3.6年税・調達費用・残存期間・時間価値・価格変動を無視した概算です。投資の有利不利を判定する完全な比較ではありません。
この計算だけで「損切りした方が得」とは言えません。古い債券も満期が来れば再投資でき、新しい債券を長期化すれば金利リスクが増える場合があります。同じ比較期間で、税引後のキャッシュフローとリスクを比べることが必要です。
前向きに評価しやすい条件
損失を吸収できる資本があり、再投資後の増収・リスク管理・実施時期が具体的。
追加確認が必要な条件
資金繰りの都合で売却を迫られた、高利回りだけを求めて信用・期間リスクを増やした。
赤字の理由が「将来の稼ぐ力を整えるため」なら、翌期の答え合わせが大事です。計画の説明と、その後の利息収入をセットで追いかけましょう。
15優先株って何? 普通株主こそ知りたい仕組み
優先株は、配当や残余財産の分配などで普通株より優先される権利を持つ株式の総称です。内容は銘柄ごとに違い、優先配当率だけでは性格が分かりません。「優先」という名前は、元本が保証されるという意味ではありません。
契約に基づく返済の権利
配当・残余財産の権利など
残余のリスクを引き受ける
清算時のごく大まかな位置付けは債権者→優先株主→普通株主。実際の債権内の優先順位、劣後条項、損失吸収条項、個別の法的処理は別途確認が必要です。
| 比較点 | 普通株 | 優先株 | 一般的な社債 |
|---|---|---|---|
| 位置付け | 株式 | 株式 | 負債 |
| 受取り | 通常は業績・配当方針による | 優先配当の条件による | 契約上の利息による |
| 議決権 | 通常あり | なし・制限付きなど条件による | 通常なし |
| 元本の確実な回収 | 保証なし | 保証なし | 発行体の信用リスクあり |
| 普通株への転換 | 通常は対象外 | 転換・取得条項を持つ場合あり | 普通社債では通常なし |
| 個人が買いやすいか | 上場株なら市場売買できる | 非上場・譲渡制限付きの場合あり | 商品・販売条件による |
普通株主にとっての3つの影響
- 利益の配分:優先配当があると、普通株主に帰属する利益を計算するときに調整が必要になる。
- 純資産の配分:純資産の全部が普通株の取り分ではない。BPS計算で優先株部分を控除する。
- 将来の株数:普通株を渡す条項があると、将来の持分・1株利益が変わり得る。
銀行が優先株を発行する理由には、資本を厚くする、経営の安定を図る、普通株の議決権構成への即時の影響を抑える、といった目的が考えられます。ただし、資本に算入できるかどうかは規制上の条件によります。優先株がある銀行を一律に悪いと評価する必要はありません。
普通株しか持っていなくても、優先株の条件は自分の持ち分に関わります。株価欄には見えない「もう一種類の株主」を意識しましょう。
16宮崎太陽銀行のB種優先株を、発行条件から読む
添付有価証券報告書には、第1回B種優先株式の条件が詳しく記載されています。ここは一般論ではなく、実際の契約条件を整理します。
| 確認項目 | 開示内容 | 普通株主から見た意味 |
|---|---|---|
| 発行済株式数 | 60万株 | 普通株とは別の種類株式 |
| 払込金額相当額 | 1株1万円、総額60億円 | 純資産の全部を普通株の価値にしてはいけない |
| 年間優先配当 | 年率1.75%、1株175円 | 通常の年間配当額は合計1.05億円 |
| 非累積 | 配当不足額を翌年度以降へ累積しない | 未払いを自動で積み上げる条件ではない |
| 非参加 | 原則として定められた優先配当を超えて参加しない | 業績が伸びても同じ比率で無制限に配当が増える設計ではない |
| 議決権 | 株主総会の全事項について行使できない | 普通株と権利が違う |
| 上場・譲渡 | 非上場、譲渡による取得に取締役会承認が必要 | 通常の上場株のように市場で自由に買う商品ではない |
| 金銭取得 | 2029年4月1日以降、一定条件で可能 | 取得できる開始時期であり、必ず返済する期日ではない |
| 普通株対価の取得 | 2032年4月1日に残存B種の全てを取得 | 残っていれば普通株交付による希薄化を検討する必要 |
| 一斉取得価額 | 所定の30連続取引日の終値平均。下限475円(調整条項あり) | その日の株価だけで転換株数が決まるわけではない |
出典:資料1 / 27〜30ページ・90ページ。金額は資料の表示単位で丸められています。
A種優先株を取得・消却し、公的資金を完済したと公表。
B種優先株の金銭取得が、開示条件のもとで可能になる。
その時点で残るB種優先株を、普通株式を対価として一斉取得する条項。
A種とB種は別の話です。過去の公的資金に係るA種は、銀行が2022年に完済を公表しています。現在のB種が残ることを「同じ公的資金130億円が未返済」と表現するのは誤りです。B種については、添付有報31ページに金融機関・その他法人・個人の保有区分が記載されています。
出典:資料5 / 2022年11月30日の公的資金完済の開示。B種保有区分は資料1・31ページ。金額は資料の表示単位で丸められています。
条項の説明は添付有報に基づきます。将来の条件変更や資本取引があれば、最新の定款・発行要項・適時開示に更新して確認してください。
17EPS・BPSは「普通株に帰属する分」で計算する
PERやPBRを正しく計算するには、分母となる1株利益・1株純資産を正しく読む必要があります。優先株がある場合、単純に純利益や純資産を普通株数で割ると取り分を大きく見積もってしまうことがあります。
自己株式を除く株数を使用。優先配当等の控除や四半期の扱いは、実際の「1株当たり情報」の注記に従います。
添付有報の2026年3月期で確認
| EPSの材料 | 開示値 |
|---|---|
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 1,480百万円 |
| 普通株主に帰属しない金額(優先配当等) | 105百万円 |
| 普通株式に係る利益 | 1,375百万円 |
| 期中平均普通株式数 | 5,258千株 |
| 会社開示のEPS | 261.51円 |
| 会社開示の潜在株式調整後EPS | 190.16円 |
出典:資料1 / 90ページ。金額は資料の表示単位で丸められています。
仮に優先配当を引かず、1,480百万円を表示株数で割ると約281.48円になります。これでは普通株主の利益を多く見積もることになります。また、潜在株式調整後EPS190.16円は、将来の2032年のEPSを予想した数字ではありません。当期の会計ルールで潜在株式の影響を反映した指標です。
| BPSの材料 | 開示値 |
|---|---|
| 連結純資産 | 47,667百万円 |
| 控除する額の合計 | 7,772百万円 |
| うち優先株式 | 6,000百万円 |
| うち優先配当額 | 52百万円 |
| うち非支配株主持分 | 1,720百万円 |
| 普通株式に係る期末純資産 | 39,894百万円 |
| 算定に使う期末普通株式数 | 5,065千株 |
| 会社開示のBPS | 7,875.53円 |
出典:資料1 / 90ページ。金額は資料の表示単位で丸められています。
第1四半期EPSを単純に4倍して通期EPSを予想するのも危険です。優先配当の認識、信用コスト、保有株売却、季節性、期中平均株数が四半期と通期で違うため、年間の利益計画から積み上げる方が筋道が通ります。
18B種を金銭で取得すると、何が変わる?
優先株を全額金銭で取得し、優先配当がなくなれば、将来の普通株主に帰属する利益は増える方向に働きます。ただし、取得資金が銀行の外へ出るため、運用収益と資本の厚みも変わります。
| 増え得るもの | 減り得るもの | 事前に必要な確認 |
|---|---|---|
| 普通株主に帰属する利益 | 現金・運用資産 | 取得後の資金繰りと流動性 |
| 普通株への配当余力 | 優先配当の負担 | 実際の普通配当方針 |
| 希薄化リスクの解消による評価 | 規制資本に算入される資本 | 取得後の自己資本比率と資本計画 |
優先配当が消える効果は、どれくらい?
B種60億円×年1.75%=年間1.05億円。仮に普通株数を500万株と置けば、優先配当だけの効果は1株当たり年21円です。これは普通配当が自動的に21円増えるという意味ではありません。銀行内に留保する選択もあります。
さらに、60億円を払うことで、その資金から得られたはずの収益を失います。簡便に取得資金の税引後収益率を1%と仮定すると、失う収益は年0.60億円。配当負担減との単純な差は1.05−0.60=年0.45億円となります。実際の効果は資金の出所、資産圧縮、代替調達、取得費用などで変わります。
規制資本は、取得後も十分か
教育用に、2026年6月末の単体規制資本380.70億円から60億円がすべて減り、リスクアセット4,310.45億円が一定と仮定すると、比率は(380.70−60)÷4,310.45=約7.44%です。
これは銀行の2029年予想でも、取得の可否の判定でもありません。規制資本への実際の算入状況、取得までの利益蓄積、配当、自社株買い、資産構成の変化などを無視した感応度です。現在の比率から引き算するだけで、将来の余力を断定しないようにしましょう。
出典:資料2 / 現在の単体規制資本・リスクアセットはPDF13ページ。取得条件は資料1・28ページ。金額は資料の表示単位で丸められています。
カタリストとして見るなら「いつ取得するか」だけでなく、「取得した後も融資・配当・成長投資を支えられるか」まで見たいですね。
19普通株へ転換すると? 希薄化を数字で理解する
2032年4月1日に残存B種があれば、開示条項では普通株を対価に取得します。この際の普通株交付数は、残る優先株の払込金額相当額と一斉取得価額によって変わります。
次は、優先株60億円が全額残る・既存普通株500万株・年間純利益15億円・年間優先配当1.05億円という教育用の仮定です。既存株数や利益を2032年の予想とするものではありません。
| 仮定する取得価額 | 交付株数 | 既存株主の持分比率 | 全額転換後のEPS |
|---|---|---|---|
| 1,500円 | 400万株 | 55.6% | 166.67円 |
| 2,500円 | 240万株 | 67.6% | 202.70円 |
| 4,000円 | 150万株 | 76.9% | 230.77円 |
2,500円の例では普通株数が500万株から740万株になります。優先配当負担はなくなりますが、同じ利益を分け合う株数が増えるため、1株当たり利益は小さくなります。ここでいう67.6%は、既存株主全体が転換後に持つ割合です。株価がその割合だけ下がるという予測ではありません。
入力して比較:維持・金銭取得・全額転換
仮想の通年状態を比べる教材です。実際の転換年の期中平均株数や会計上の希薄化EPSを再現するものではありません。
自動計算が有効になると、入力変更で結果が更新されます。上の表でも確認できます。
計算式:維持=(利益−優先配当)÷普通株数。金銭取得=(利益−優先株残高×税引後収益率)÷普通株数。全額転換=利益÷(既存株数+交付株数)。金銭取得の経過配当・税務・諸費用・資本制約、転換時期による期間配分は含みません。
株価下落と「転換株数増加」が重なる場合
同じ60億円を普通株へ置き換えるなら、取得価額が低いほど交付株数が増えます。B種には下限475円の条項がありますが、その下限自体に調整条項があります。ここでの入力計算は一般的な仕組みを見るもので、下限や平均株価の条件を自動適用していません。
20低PBRは入口。ROEと普通株の取り分を組み合わせる
PBRが低ければ、会計上の純資産に対して株価が低いということは分かります。しかし、それだけでは市場が間違っていると断定できません。資本の収益性、信用リスク、含み損、流動性、優先株の影響などを織り込んでいる可能性があります。
PBR = 株価 ÷ BPS
配当利回り = 1株配当 ÷ 株価 × 100
資本を稼ぎにつなげる力を見る
同じBPS8,000円でも、普通株に帰属する利益が1株240円の銀行と640円の銀行では、資本から生み出す利益が異なります。期末BPSで割る簡便値は3%と8%。正式なROEは期首・期末の平均資本などを使うため完全に同じではありませんが、低PBRと低収益性がつながる理由を考える入口になります。
| 持続可能なROEの仮定 | 株主資本コストの仮定 | 成長ゼロの理論PBRの目安 |
|---|---|---|
| 4% | 8% | 0.50倍 |
| 6% | 8% | 0.75倍 |
| 8% | 8% | 1.00倍 |
| 10% | 8% | 1.25倍 |
この表は銀行の目標株価ではありません。実際には成長率、必要な内部留保、資本政策、損失リスク、評価差額などが変わります。「ROEが上がれば何倍になる」という直線的な約束として使わないでください。
歴史的な公表値を使い、指標計算の練習をする
PER・PBR・利回りを入力して確認
初期株価2,500円は架空値。EPS・BPSは2026年3月期の公表実績、配当50円は同年度普通配当を教材として設定。現在の投資指標ではありません。
自動計算が有効になると、入力変更で結果が更新されます。数値は外部へ送信されません。
売買の検討に使う場合は、株価の日時、EPSの実績・予想の区分、BPSの期末日を別途メモします。市場の予想PERと、ここで実績EPSを入力したPERでは意味が違います。
21宮崎太陽銀行を「良い点・課題・未確認」に整理する
ここまでの分析をまとめると、宮崎太陽銀行は「本業が改善している」という見方と、「信用リスク・有価証券・優先株を継続確認したい」という見方が両立します。銘柄を一言で褒めるより、判断の材料を分けた方が次の決算で検証しやすくなります。
| 分類 | 確認できたこと | 次に追いかける数字 |
|---|---|---|
| 良い変化 | 第1四半期の資金利益・コア業務純益が増加 | 貸出利回りと預金コストを差し引いた利益の持続性 |
| 良い変化 | 第1四半期の役務利益の赤字幅が縮小 | 通期での利益、継続性、関連費用 |
| 注意して読む | 経常増益に貸倒引当金戻入益も寄与 | 通常の与信費用を計上した場合の収益力 |
| 課題として追う | 開示債権比率は前期末から改善も、2025年3月末比で高い | 要管理債権の正常化、新規発生、引当・保全 |
| 課題として追う | 債券評価損と株式評価益が併存 | 残存期間・金利リスク量・保有株変動への耐性 |
| 条件を確認 | B種60億円の配当・取得・普通株交付条項 | 取得計画、取得後資本、普通株への帰属利益 |
| 未確認として残す | 本記事では最新の詳細な金利感応度や将来の取得実行を確定していない | 会社の最新IR説明、正式な開示 |
第1四半期の好調を、通期へどうつなぐ?
貸出利息の伸びが続くか、預金利息が後から増えないか、戻入益を繰り返し見込んでいないかを確認します。利益が上振れたときは、収益の持続性と資本への蓄積を評価。伸びが鈍ったときは、経費や信用コスト、運用資産の入替えに理由を求めます。
「株価が安いから、何か良いことが起きれば上がる」という期待を、何が・いつ・どの数字に表れれば仮説が正しいと言えるかに変えることが、実践的な分析です。
見るべき課題がはっきりしたら、それは分析が一段進んだ証拠。良い面と気になる面を同じ紙に置くと、都合の良い数字だけ拾いにくくなります。
22カタリストは「期待」から「検証項目」に変える
カタリストとは、市場の評価や業績が変わるきっかけです。銀行株では、収益構造の改善、保有資産の見直し、優先株の取得、株主還元、再編などが候補になります。ただし、期待を会社の予定として書かないことが大切です。
| 候補 | 追いかける証拠 | 評価を下げる変化 |
|---|---|---|
| 金利効果の実現 | 資金利益、預貸金利回り、預金コスト | 預金費用や信用コストが収入増を上回る |
| 経営効率の改善 | OHRの分子・分母、店舗・システム投資の成果 | 経費削減とともに収益力も低下 |
| 有価証券の再構築 | 売却損、再投資利回り、リスク量 | 収益改善が進まず、リスクだけ増える |
| 優先株の取得 | 具体的な額・時期・取得後資本計画 | 計画の不透明化、普通株交付の影響拡大 |
| 還元政策の改善 | 配当方針、自社株買いの実行、消却 | 余力以上の還元、必要資本の不足 |
| 再編・市場アクセス改善 | 取締役会決議や適時開示などの公式情報 | 観測だけが先行し、具体化しない |
自社株買いは、額だけでなく日付を見る
宮崎太陽銀行は2026年8月19日に普通株15万株を取得し、当該決議に基づく取得の終了を公表しています。これはすでに実行された事実です。旧取得枠の残りを、これからの買い需要として織り込まないようにします。株数が変わるため、EPS・BPSの更新時点にも注意が必要です。
出典:資料7 / 2026年8月19日の適時開示。金額は資料の表示単位で丸められています。
再編期待と、買付価格は別々に考える
再編の可能性が話題になることと、正式な合意があることは違います。再編があっても、統合比率、費用、システム移行、資本政策次第で普通株主への効果は変わります。低PBRだから一定のプレミアムで買収されると決めつけることはできません。
銀行に聞くなら、この6問
- 貸出金利回りと預金利回りの変化を踏まえ、資金利益をどう管理していますか。
- 開示債権の増加要因と、正常化を確認するための指標は何ですか。
- 円債の金利リスク量と、損失吸収力をどのように開示していますか。
- B種優先株の金銭取得を判断するための資本・収益の目安は何ですか。
- 優先株取得・普通配当・自社株買いの優先順位をどう考えていますか。
- 普通株主に帰属するROEの改善策と、進捗を測る指標は何ですか。
公開情報だけで答えが出る項目は省き、未公表の重要情報の個別提供を求めない質問に絞ります。上記は問い合わせ文の案であり、送付はしていません。
23決算を開いたら使う、16項目チェックリスト
次に銀行の決算資料を読むときは、この一覧を使ってみてください。「確認した」にチェックを入れる方式です。点数が高いほど投資価値が高いという意味ではなく、分析作業の抜けを減らすための道具です。
チェック状態はこのページを開いている間の確認用です。入力内容の送信・永続保存は行いません。
時間が10分しかないときの順番
- 最初の2分:利益の中身単体のコア業務純益、連結純利益、株式売却・戻入益などを確認。
- 次の3分:預金と信用預金コスト、貸出の構成、開示債権、与信費用をチェック。
- 次の3分:保有資産と資本評価差額、規制資本、優先株の残高と条件を読む。
- 最後の2分:次回の宿題説明できない変化を3つだけ書く。株価判断はその後。
株価が大きく動いたときほど、確認に戻る
銀行株は金利観測や景気見通しでまとめて買われたり売られたりします。値動きだけで分析の結論を書き換える前に、業績仮説が変わったのか、市場の評価だけが動いたのかを分けましょう。取引量が小さい銘柄では、出来高・売買スプレッド・注文量も確認します。
安値で買えそうなときでも、資本不足や大幅な希薄化で前提が変わっていないかを再点検。好調なときでも、保有比率が大きくなり過ぎていないかを確認します。上昇時の期待と下落時の不安を、同じチェック項目で受け止めることがリスク管理につながります。
24つまずきやすい疑問を、ここで解消
知りたい質問を開くと、答えが表示されます。
銀行株は、金利が上がれば必ず上がりますか?
必ずではありません。利息収支の改善と、預金コスト・債券価格・信用コストの変化が同時に起こり得ます。市場がすでに利上げを織り込んでいる場合もあります。業績への影響と株価の反応を分けて考えましょう。
コア業務純益が増えれば、純利益も増えますか?
信用コスト、株式関係損益、特別損益、税金などによって純利益は変わります。コアは収益の土台をみる指標で、最終的な普通株主の利益とは異なります。
役務取引等利益がマイナスなら、手数料収入がないの?
収益があっても、支払保証料などの関連費用が上回れば利益はマイナスになります。収益と費用を両方見てください。
不動産向け融資が多い銀行は避けるべきですか?
比率だけでは判断できません。開示区分の範囲、物件の種類、借り手の返済原資、担保、融資条件、集中度、残高の増え方を調べます。
含み損の債券は、満期まで持てば何も問題ない?
契約どおり償還され、途中売却が不要なら市場価格変動の一部は満期に向けて縮小し得ます。ただし、信用損失、途中の資金需要、低利回りを固定する機会費用、資本・流動性制約は残ります。
国内基準なら、含み損は決算書に出ないのですか?
その他有価証券は会計上、原則時価評価されます。国内基準の規制資本に評価差額を原則算入しないことと、貸借対照表に反映しないことは別です。満期保有目的債券も注記の時価を確認します。
自己資本比率が4%を上回れば安全ですか?
最低基準を超えていることだけで、安全性や投資価値は判断できません。想定損失への余力、資本の質、信用リスク、金利リスク、流動性、収益力を合わせて確認します。
優先配当1.75%は、普通株の配当利回りですか?
違います。宮崎太陽銀行のB種に定められた払込金額相当額に対する優先配当率です。普通株の利回りは、普通株の1株配当を自分の参照株価で割って計算します。
2029年になればB種優先株はなくなりますか?
自動的になくなる条項ではありません。2029年4月1日以降、金融庁の事前確認などの条件のもとで金銭取得が可能になります。実際の実施は会社の正式開示で確認します。
B種60億円を取得すれば、EPSが21円増えますか?
500万株と仮定し、優先配当だけを見れば年21円の効果です。しかし取得資金の運用収益減少、取得時期、費用、株数変化なども影響するので、実際の増加額ではありません。普通配当の増額を意味する数字でもありません。
普通株へ転換されたら、必ずその日に損をしますか?
交付株数による持分・1株利益への影響はありますが、株価は事前の織込み、業績、資本政策、需給でも変わります。計算上の希薄化率を、その日の株価下落率と同一視しないでください。
どの資料から読むのが早いですか?
決算短信と補足資料で当期の変化をつかみ、決算説明資料で理由を確認し、有価証券報告書で貸出構成・会計方針・優先株条件・1株当たり情報を補います。更新日と訂正の有無も確認してください。
25用語帳と「次の決算で使える」まとめ
| 用語 | この記事で押さえる意味 |
|---|---|
| 資金利益 | 利息などの運用収益から調達費用を引いた利益 |
| 役務取引等利益 | 手数料等の収益から対応する費用を引いた利益 |
| 実質業務純益 | 一般貸倒引当金繰入前の業務純益 |
| コア業務純益 | 実質業務純益から国債等債券損益などを調整した指標 |
| 与信費用 | 貸倒れや引当てなどによる損益負担。銀行ごとの定義を確認 |
| OHR | 業務粗利益に対する経費の割合 |
| 平残・末残 | 期間中の平均残高・期末時点の残高 |
| 預金ベータ | 基準金利の変化に預金金利がどれだけ追随するかという考え方 |
| 修正デュレーション | 利回りの小幅変化に対する債券価格の敏感さ |
| リスクアセット | 信用・市場・オペレーショナル等のリスクを反映した規制上の量 |
| CET1 | 普通株式等Tier1。国際統一基準の中核的な資本区分 |
| EPS・BPS | 1株当たり利益・1株当たり純資産 |
| 非累積・非参加 | 配当不足を翌期へ持ち越さない・所定配当を超える利益配分に原則参加しない |
| 希薄化 | 株式数の増加などで既存株主の持分や1株指標が変化すること |
銀行株は、5つの窓で読む。
稼ぐ力は伸びているか。
預金と貸出の質は保たれているか。
損失を受け止める資本と流動性はあるか。
普通株主に残る利益と純資産はいくらか。
いまの株価と、変化の根拠は釣り合っているか。
この順番なら、「金利が上がるから買い」「PBRが低いから買い」という一言から、数字で説明できる自分の分析へ進めます。
決算書の奥には、難しい用語だけでなく、銀行がどんな顧客を支え、どこで稼ぎ、何に備えているかという経営の姿が見えてきます。最初から全部を理解しなくても大丈夫。次の決算では、気になった銀行について、まず5つの窓を一つずつ開いてみてくださいね。
数字をたくさん集めることより、「その数字が変わった理由」を一つ説明できること。そこから、銀行株の決算書が読み物として面白くなります。
26出典・基準日・計算上の注意
記事作成時点:2026年10月6日。財務実例は2026年3月期・2026年6月末を中心とし、自己株式取得終了は2026年8月19日の開示まで反映しています。リアルタイム株価や非公表の将来計画を示す記事ではありません。
- 資料1:宮崎太陽銀行 第125期有価証券報告書2026年6月22日提出。提供PDF「00 (1).pdf」(全110ページ)。預金・貸出19・22ページ、規制資本12・20・23ページ、優先株27〜31ページ、財務諸表56〜58ページ、有価証券77〜79ページ、1株当たり情報90ページ。
公式の有価証券報告書掲載ページ - 資料2:2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)2026年8月6日公表。対象2026年4〜6月。PDF1・6・12〜15ページを参照。本文ページ番号とPDFページ番号が異なるため、本記事ではPDFページも併記。
会社開示PDF(福岡証券取引所) - 資料3:2026年3月期 決算説明資料2026年5月13日公表。単体の収益・与信費用・貸出・預金の説明。特にPDF8〜11ページ。
会社開示PDF(福岡証券取引所) - 資料4:自己資本規制に関する公的資料金融庁の主要行等監督指針「自己資本の充実」等、および財務省『ファイナンス』2022年10月号38ページ(電子版42/82)を参照。規制資本と会計上の自己資本の違い、国内基準における評価差額の扱い。
金融庁の監督指針 - 資料5:公的資金の完済に関するお知らせ2022年11月30日公表。A種優先株式の取得・消却。B種優先株の今後の取得とは区別。
会社開示PDF(福岡証券取引所) - 資料6:日本銀行「全国銀行の平成10年度決算」1999年7月。コア業務純益の定義に関する基礎資料。現在の銀行の数値を示す資料としては使っていません。各行の最新の定義を優先。
日本銀行の原資料 - 資料7:自己株式の取得結果・取得終了に関するお知らせ2026年8月19日公表。当日の普通株15万株の取得と当該取得終了を確認。
会社開示PDF(福岡証券取引所) - 資料8:添付雑誌写真2点提供写真で確認できる『日経マネー』2026年11月号59ページほか。利益分解、預金・貸出、OHR、金利リスク、債券入替えという論点を参考に、本文・図表を独自に再構成。誌面画像や本文の転載はしていません。
資料4の補足:財務省『ファイナンス』の自己資本規制解説。金利リスクなどの背景については日本銀行「金融システムレポート」2026年4月号も参考になります。
数字を再利用するときの約束
- 百万円・億円、単体・連結、期間・時点を必ず併記する。
- 実績、会社予想、本記事の計算、教育用の仮定を混ぜない。
- 銀行の開示数値は丸められているため、表示値だけの足し引きと一致しない場合がある。
- 本記事のOHR・感応度・転換比較は簡便計算。会社の公式な将来予想や規制比率の判定ではない。
- 公開後に新しい決算・訂正・資本政策が出たら、該当する表と基準日を更新する。
本記事は銀行決算を学ぶための情報整理です。特定銘柄の売買・将来の株価・配当を保証するものではありません。実際の判断では最新の公式資料とご自身の条件を確認してください。
記事の最初へ戻る ↑
