大伸化学(4629)はなぜ利益6.2倍?ナフサ・決算・配当と株価3,000円の条件

大伸化学の透明な溶剤と利益の仕組みを解説するゆずママのイラスト
ゆずママの銘柄探検 | 東証スタンダード 4629
利益は6.2倍。
でも、売れた量は増えていない。
大伸化学の「次の利益」を探そう。

「すごい決算! じゃあ株価も上がる?」――その前に、もう一枚だけ決算書をめくってみませんか。今回の主役は、工場の塗る・刷る・洗うを支える有機溶剤メーカー、大伸化学です。

見どころは、値上げで広がった利益がどこまで残るか。株価3,000円や増配が見えてくる条件まで、数字でたどります。

記事再検証:2026年10月13日 / 株価基準:前営業日2026年10月9日終値2,279円
対象:2027年3月期。会社予想は8月7日公表値。市況は下記の取得時点、利益モデルの入力は10月6日設定。株価・モデルは自動更新されません。

まず1分。この記事の結論

−0.5%

出荷量はほぼ横ばい
大幅増益の中身は、単価と在庫の時間差。

約249円

モデルAの下期EPS×2
年率に直した参考計算。持続利益の確認値でも来期予想でもありません。

45円

会社の年間配当予想
70〜88円は、連結EPSに仮に25%を掛けた記事独自の計算です。

現時点の見方:注目継続。買い増しの判断では、好決算の大きさに加え、下期の利益率と還元方針の具体化を確認したいと考えます。

実績会社予想記事の仮定・計算

読みたい順でどうぞ。仕組みを学ぶなら①〜⑥、投資判断を急ぐなら⑨ 利益の時間軸 → ⑩ 株価の条件 → ⑫ 次の決算チェックへ。

出典:[1] / [M]

01大伸化学は、工場の「塗る・刷る・洗う」を支える会社

大伸化学は、塗料用シンナー、印刷用溶剤、洗浄用溶剤などを扱う有機溶剤の専業メーカーです。お店で買う商品の名前としては目立たなくても、ものづくりの現場では、こうした液体が働いています。

塗る

塗料を扱いやすくする溶剤。塗装工程の使い勝手や仕上がりを支えます。

刷る

印刷インキ向けの溶剤。用途や工程に合わせた液体を供給します。

洗う

製造現場で使う洗浄用溶剤。製品をつくる周辺工程も支えます。

ここで面白いのが、お客様ごとに「ちょうどいい配合」が違うこと。塗料や素材、必要な性能などに合わせて研究・開発・製造し、会社の製品ページによれば、製品情報のデータベースは約32,000種類あります。

ゆずママのひとことイメージするなら、工場向けの「液体の仕立て屋さん」。注文に合わせた配合と、必要なときに届ける仕組みが、事業を見る入口になります。

会社は、多品種・少量の受注生産や、1Lからタンクローリーまでのさまざまなロットへの対応を説明しています。こうした積み重ねは注目点ですが、種類が多いというだけで「競争に絶対勝てる」とは言い切れません。それが利益率や顧客との取引継続に表れているかを、決算で確かめたいところです。

2026年3月期・連結売上高
346.1億円
営業利益
11.70億円
製品出荷量
138,346t

出典:[2] / [3]

02最初の謎。売上38%増なのに、出荷量はほぼ横ばい

2027年3月期の第1四半期、つまり2026年4〜6月の数字を見てみましょう。見出しだけなら「絶好調!」で終わりそうですが、ここからが銘柄探検です。

ちょっと考えてみよう

売上高が前年同期比38.0%増。
製品出荷量は、何%増えたでしょう?

A+38.0%
B+15.0%
C−0.5%
答えと、その理由を見る

正解はCの−0.5%。製品出荷量は33,603tで、ほぼ横ばいでした。会社は、販売単価の上昇が増収に寄与したと説明しています。

「増収=たくさん売れた」と思い込むと、読み違えてしまう決算なのです。

表は横にスクロールできます →

2027年3月期 第1四半期・連結実績
項目2026年4〜6月前年同期比
売上高116.38億円+38.0%
営業利益9.75億円+522.2%
純利益6.79億円+469.1%
製品出荷量33,603t−0.5%
EPS148.48円前年同期26.09円

522.2%増は、「5.2倍になった」という意味ではありません。元の100%に増えた522.2%を足すので、前年の約6.22倍です。数字の見出しを読むときの、ちょっとした落とし穴ですね。

会社は利益面について、新規需要の開拓に加え、在庫受払差が増益要因になったと説明しています。ここを理解すると、ナフサ価格と利益の関係がぐっと見えやすくなります。

利益が増えた場所は、決算書でも見える

表は横にスクロールできます →

前年4〜6月と2026年4〜6月の比較・億円
項目前年同期今回増減
売上総利益10.8719.14+8.27
販管費9.309.38+0.08
営業利益1.579.75+8.19
売上総利益率12.89%16.44%+3.55pt

粗利益の増加に対し、販管費は小幅な増加にとどまりました。その結果、営業利益の伸びが大きくなっています。ただし、会社は在庫受払差の金額を個別開示していません。8.27億円の粗利益増を、すべて在庫の効果と決めつけることはできません。

出典:[1]

03在庫は「過去の仕入れ値」を連れてくる

仕入原価と販売価格は、同時に、同じ幅で変わるとは限りません。先に買った原料が在庫として残っている間に、新しい販売価格へ切り替われば、売値と原価の差が一時的に広がることがあります。

1 / 仕入れ

原料を買う

原油・ナフサ・為替が、溶剤の仕入価格に影響。

2 / 在庫・製造

過去と今の原価が混ざる

主な棚卸資産は総平均法。利益に出る原価には時間差がある。

3 / 販売

販売価格も動く

価格改定のタイミングが、値差を広げたり縮めたりする。

(売値 − 仕入原価)×数量−その他費用≒利益

仕組みをつかむための概念式です。実際には製造費用・物流費などがあり、会社の会計上の営業利益をこの式だけで算出するわけではありません。

ゆずママのひとこと同じだけ売っても、「1kgあたり、いくら残るか」が違えば利益は変わります。大伸化学は、この数量と値差の二つを一緒に見ると理解しやすい会社です。
数字で見る:値差が広がるとき・縮むとき

説明用の架空例 売値110円・原価100円なら、値差は10円。売値が130円になり、平均原価がまだ110円なら、値差は20円です。

逆に、売値が110円へ戻ったのに、原価がまだ115円なら、値差はマイナス5円。原料価格の下落局面でも、一時的に苦しくなる可能性があります。

この数字は大伸化学の実際の価格ではなく、価格改定と在庫の時間差を説明するための例です。

覚えておきたいのは、「原油が下がったか」だけでなく、売値と原価のどちらが先に、どれだけ動いたか。
「在庫の逆風」には二つあります。
① 高い原価の在庫を販売する一方、売値が先に下がる値差の縮小。② 在庫の収益性が落ち、帳簿価額を切り下げる棚卸資産評価損。別の現象なので区別して読みます。会社が示した「在庫受払差」だけから、どちらの金額も特定できません。

出典:[1] / [7]

04シンナー統計を、そのまま会社に当てはめない

「シンナーが値上がりした。それなら大伸化学の売上も同じ割合で増える?」と思いたくなりますが、会社の中身を少し分解してみましょう。

会社の売上は、いくつかの製品・商品でできている
2026年4〜6月の売上構成比0%10%20%30%40%単一溶剤類39.6%印刷用溶剤類20.2%特殊シンナー類10.7%商品14.2%その他15.3%
第1四半期の売上高116.38億円に対する概算比率。その他は塗料用・洗浄用等の製品とその他収入を含む残差。小さい画面ではグラフを横にスクロールできます。

単一溶剤、印刷用溶剤、特殊シンナーに加え、仕入れて販売する商品もあります。全国のシンナー統計と、大伸化学の製品構成は一致しません。業界統計は「風向き」を読む材料として使い、会社の出荷量・売値・利益率を重ねて考えます。

単価を出すときの小ワザ:「会社の総売上高÷製品出荷量」では、商品売上まで製品数量で割ってしまいます。この記事では商品・その他収入を除き、製品単価を概算しています。第1四半期は税抜約297円/kgです。

出典:[1] / [M]

05原料相場は動く。「下がったから安心」で止まらない

夏までのナフサ価格下落を見て、「これからは原料安で利益が増える」と考えたくなります。でも、確認する数字にはいつの価格か、いつ届く原料かという名札が必要です。

2026年10月13日 10:00評価
1,001.50ドル/t

ナフサC&F JAPAN・11月後半到着分。NAP REPORT独自評価。前営業日比+44.00ドル。

2026年8月・輸入実績の速報
87,550円/kL

輸入ナフサの月次平均。5月の123,732円/kLから約29.2%低下。

この二つは、単位も対象期間も異なります。同じ線グラフにつないだり、直接騰落率を計算したりしません。10月13日の評価値は前営業日より上昇しており、夏の下落だけを根拠に足元の調達環境を説明するのは不十分です。

輸入ナフサは、5月の高値から下がってきた
2026年3月から8月の輸入ナフサ価格。縦軸0〜14万円/kL。万円/kL024681012143月:6.61万円/kL6.613月4月:10.18万円/kL10.184月5月:12.37万円/kL12.375月6月:12.19万円/kL12.196月7月:10.43万円/kL10.437月8月:8.76万円/kL8.768月
財務省貿易統計をNAP REPORTが集計。3〜7月は確報、8月は速報。グラフは月次輸入価格だけをつないでいます。小さい画面ではグラフを横にスクロールできます。
原油・為替・ナフサは仕入環境を読む材料です。会社が実際に買う溶剤は、品目別の需給や契約条件も違います。この記事では、更新時刻の異なる原油・為替を混ぜた「現在の国産ナフサ換算値」は置かず、会社の売値・原価・数量で利益を点検します。

後半のEPS約353円は、10月6日に置いた数量・単価・利益率による検証モデルです。この最新ナフサ評価値を入力して自動算出した業績予想ではありません。

出典・計算:[6] / [M]

06シンナーの統計は、「量が弱い・価格は高い」

10月13日の統計一覧でも、詳細確報は7月、速報は8月までの掲載を確認。「最新公表」と「足元の実態」には時間差があります。

全国のシンナー統計を見ても、数量と金額を分ける大切さがわかります。確認できた詳細確報では、7月の販売数量は前年同月比13.5%減。一方、平均販売単価は29.6%高でした。

① 数量:7月は31,306t
2026年4〜7月の全国シンナー販売数量。縦軸0〜40千t。千t0102030404月:33.034千t33.0344月5月:31.014千t31.0145月6月:32.659千t32.6596月7月:31.306千t31.3067月
メーカー販売数量。流通量の代理指標として使っていますが、最終ユーザーの消費量ではありません。小さい画面ではグラフを横にスクロールできます。
② 価格:7月は345円/kg
2026年4〜7月の全国シンナー平均販売単価。税込、縦軸0〜400円/kg。円/kg・税込01002003004004月:315円/kg・税込3154月5月:356円/kg・税込3565月6月:363円/kg・税込3636月7月:345円/kg・税込3457月
全国の平均販売単価は税込。大伸化学の税抜製品単価へ、そのまま代入しないように注意。小さい画面ではグラフを横にスクロールできます。

表は横にスクロールできます →

全国シンナー:販売数量・平均単価・販売金額
2026年販売数量平均単価・税込販売金額
4月33,034t315円/kg104.05億円
5月31,014t356円/kg110.29億円
6月32,659t363円/kg118.48億円
7月31,306t345円/kg108.01億円
値上げの効果で売上が大きく見える時期ほど、「何トン売れたか」を忘れない。

8月速報では、塗料の対象2区分合計の出荷が前年同月比4.1%減でした。需要環境を見る補助材料になりますが、これは塗料の統計で、シンナーそのものの数量や価格ではありません。7月のシンナー確報と、8月の塗料速報は分けて扱います。

出典:[4] / [5]

07決算を予測してみよう。出荷量は控えめ、値差が勝負

ここからは会社予想を上回る条件を試す「記事モデルA」です。数量・単価・利益率を明示した検証用の仮定です。最も起こりやすいケースという統計的な裏付けはなく、確率予測ではありません。

前提が変われば、通期EPSも変わる

モデルAだけで判断しないよう、数量・単価・粗利率などを組み合わせた3ケースを並べます。全入力は計算付録に掲載しています。

3ケースの条件比較|いずれも会社予想ではなく記事の独自試算
記事の仮定通期売上通期営業利益通期EPS下期EPS×2
慎重419.31億円17.10億円261.31円135.84円
モデルA448.83億円23.48億円353.35円248.92円
強気470.81億円28.91億円431.74円349.72円

この範囲に収まる確率を推定した表ではありません。慎重ケースでも、さらに悪い結果はあり得ます。下期EPS×2は季節性を無視した参考年率で、来期予想ではありません。入力値は10月6日設定、10月13日再計算。

ここからは会社の発表値ではなく、この記事の独自試算 です。第1四半期の実績を固定し、残りの期間の数量、製品単価、商品等売上、粗利率、販管費を置いて積み上げます。

このモデルの日付:入力設定 10月6日/計算検証 10月13日。10月13日のナフサ評価値を直接代入した最新業績予想ではありません。

記事モデルAの製品出荷量は、中間期65,853t、通期133,503t。前年に対して中間期は約3.0%減、通期は約3.5%減を想定します。数量の急拡大に頼る予測ではありません。

表は横にスクロールできます →

予測の材料:高かった第1四半期の利益率は、その後低下する前提
記事モデルA4〜6月 実績7〜9月 予測10〜3月 予測
製品出荷量33,603t32,250t67,650t
製品単価・税抜約297円/kg289円/kg285円/kg
商品等売上約16.64億円15.45億円31.00億円
売上総利益率16.44%13.8%12.3%
販管費9.38億円9.60億円19.20億円
予測の限界も公開:単価や粗利率は分析上の仮定です。過去統計への回帰分析で、原油から利益への係数を求めたわけではありません。原油・為替・ナフサの影響を別々に利益へ足して二重計算することも避けています。

モデルA:中間期EPSは約229円

表は横にスクロールできます →

2027年3月期 中間期=2026年4〜9月
中間期会社予想独自試算・モデルA
売上高206.90億円225.03億円
営業利益14.00億円15.15億円
純利益8.90億円10.47億円
EPS194.53円228.89円

記事モデルAの中間期営業利益は、会社予想を約8.2%上回る水準です。EPSの差には利益額だけでなく、予測に用いた税率と会社計画の実効税率の違いも影響します。

モデルA:通期EPSは約353円

表は横にスクロールできます →

前期は2026年3月期、予想・試算は2027年3月期
通期前期実績会社予想独自試算・モデルA
売上高346.06億円384.70億円448.83億円
営業利益11.70億円19.60億円23.48億円
経常利益12.36億円20.30億円24.32億円
純利益8.89億円12.80億円16.17億円
EPS194.39円279.77円353.35円
ゆずママのひとことここで見るのは「EPSが353円になりそう!」だけではありません。どの数量・単価・粗利率を置くと353円になるのか。前提を見れば、次の決算で何を答え合わせすればいいかがわかります。

会社予想は2026年8月7日時点。予測期間の税率は34%、株式数は4,575,177株、特別損益ゼロと仮定。純利益は親会社株主に帰属する利益です。中間期実績は今回確認した開示一覧に未掲載。

表は横にスクロールできます →

会社の計画と記事モデルAの差を、下期だけで比べる
下期=2026年10月〜2027年3月会社計画から逆算記事モデルA
売上高177.80億円223.80億円
営業利益5.60億円8.33億円
営業利益率3.15%3.72%
EPS(6カ月分)約85円約124円

記事モデルAは、下期売上が会社の想定より約26%多く、営業利益率も高い前提です。「数量は保守的」という説明だけでは不十分。単価や商品等売上も含めて、会社計画との差を確かめます。

ゆずママのひとこと予想は、答えの数字を大きく書くより「どこで会社と見方が違うのか」を見せると、ぐっと使いやすくなります。

出典:[1] / [2] / [9] / [M]

08粗利率が1ポイント違うと、EPSは約32円動く

利益予測で効くのは、売上高の大きさだけではありません。記事モデルAの下期売上高は約223.80億円。この売上に対して粗利率が1ポイント違えば、営業利益は約2.24億円動きます。

税率34%などを同じにすると、通期EPSへの影響は約32.29円。「たった1ポイント」でも、株価を考えるときには見逃せない差です。

ゆずママの利益実験室

記事モデルAの数量・売上・販管費などを固定し、下期の売上総利益率だけを変えます。

下の数値は初期条件の計算例です。操作欄が表示されない場合も、表で条件ごとの差を確認できます。

通期営業利益
23.48億円
通期EPS
353.35円
下期の営業利益・6カ月分
8.33億円
下期EPS×2・参考年率
248.92円

下期EPS×2は「同じ半年が2回なら」という計算です。来期の業績を予測していません。ここで変えた数値は、後の株価計算には自動反映しません。

下期粗利率12.3%を前提とした独自試算

表は横にスクロールできます →

下期粗利率だけを変えた感応度|他の前提はモデルAで固定
下期粗利率通期営業利益通期EPS下期EPS×2
11.3%21.24億円321.06円184.35円
12.3%(モデルA)23.48億円353.35円248.92円
13.3%25.71億円385.63円313.49円

また、製品1kgあたりの売値と原価の差が1円違うだけでも、下期の数量67,650tなら営業利益は約0.68億円、EPSは約9.76円変わります。数量が大きい会社では、1円の積み重ねが効くのです。

粗利率の感度と1kgあたり値差の感度は、同じ利益改善を別の見方で表したものです。両方を足し合わせて利益を上乗せしません。

出典:[M]

09通期353円と、下期を2倍した249円。何が違う?

249円は「実力として確認済みのEPS」ではありません。モデルAの下期124.46円を2倍した数字です。季節性と翌期の数量・売値・原価が未検証のため、将来の持続利益とは区別します。

同じ会社でも、どの利益に何倍を掛けるかで株価の見え方が変わります。とくに今回は第1四半期の好調さが、通期の数字を押し上げている点が大切です。

会社の通期予想279.77円
記事モデルA・通期353.35円
モデルA・下期を2倍248.92円
0100200300400円

棒の共通スケールは0〜400円。下期を2倍した数値は「今の仮定が1年続くとしたら」という参考計算です。季節性や翌期の原料・販売環境を予測したものではありません。

表は横にスクロールできます →

単純年率換算で、利益の持続性を点検する
EPSの見方会社計画ベース記事モデルA
通期279.77円353.35円
上期194.53円228.89円
下期(通期−上期)85.24円124.46円
下期を2倍した参考年率170.48円248.92円
通期が上振れても、下期の見通しが弱ければ「来年も353円」とは評価しにくい。反対に、下期の値差や数量が改善すれば、持続利益の見方を引き上げる材料になります。
ゆずママのひとこと今年の通知表と、来年の実力テストは別。好決算を喜びながら、「次も稼げる?」を忘れないようにしたいですね。

出典・計算:[1] / [M]

10株価3,000円は「目標」より「条件」で考える

3,000円という数字自体は、計算できます。ただし、単年の利益に掛けるのか、継続して稼ぐ利益に掛けるのかで、投資仮説は変わります。

今期モデルを評価する計算
353円 × 8.5倍

約3,000円。ただし1Qの好調を含む今期の試算。来期の実力を確認した値ではありません。

持続利益で説明する条件
300円 × 10倍

3,000円。持続EPS300円への確信、利益の安定性や還元を評価する材料が必要です。

PER9倍なら必要なEPSは約333円。一方、持続EPS250円で3,000円を説明するにはPER12倍が必要です。利益と評価倍率の両方を上げるなら、それぞれの根拠を確認します。

表は横にスクロールできます →

条件を変えると評価はどう動く? 到達確率や下値の保証ではありません
説明用ケース仮定EPS仮定PER計算株価2,279円比
利益の反動が強い170円7倍1,190円−47.8%
持続利益が250円250円9倍2,250円−1.3%
利益と還元の改善300円10倍3,000円+31.6%
高収益の定着350円10倍3,500円+53.6%

上表は持続利益を仮定した感応度分析。EPS・PERはこの記事の判断用の仮定で、統計的な適正値ではありません。値幅は配当・税金・手数料を含みません。基準株価は2026年10月9日終値2,279円。1,190円も下限ではなく、前提次第でさらに下がります。

あなたの見方で、株価の条件を計算

初期値のEPS250円・PER9倍は、判断の練習用に置く仮定です。持続利益が250円と確認されたわけではありません。前の利益実験室とは独立しています。

下の数値は初期条件の計算例です。操作欄が表示されない場合も、表で条件ごとの差を確認できます。

評価株価・10円単位の概算
2,250円
EPS 250.00円 × PER 9.0倍
基準株価2,279円比
−1.3%
実績BPSに対するPBR
0.57倍

PBRと騰落率は、10円単位に丸めた表示株価で算出。BPSは決算短信から再計算した3,922.14円。入力値は外部へ送信しません。

会社の今期EPS予想279.77円を使う基準株価PERは8.15倍。持続EPS250円で見直すと9.12倍です。「割安」の程度も、利益の物差しによって変わります。

出典・計算:[1] / [10] / [M]

11現金111億円の、もう半分の物語

現預金は約111億円。基準株価での時価総額は約105億円。この組み合わせは確かに目を引きます。ここで一歩進めて、お金が増えた理由と、これから払うお金も見てみましょう。

表は横にスクロールできます →

連結貸借対照表の変化・億円(端数四捨五入)
項目2026年3月末2026年6月末増減
現金及び預金93.42111.43+18.01
売上債権 ※193.94104.59+10.65
棚卸資産 ※210.9213.66+2.74
仕入債務 ※373.3996.64+23.25
短期借入金0.003.00+3.00

※1 受取手形・売掛金+電子記録債権。※2 商品及び製品+原材料及び貯蔵品。※3 買掛金+電子記録債務。

現金が18億円増える一方、仕入債務も23億円増えています。現預金増加を、そのまま稼いだ現金と読み替えることはできません。第1四半期のキャッシュ・フロー計算書は非作成。次の開示で営業CFと運転資金の動きを確かめます。

現預金から短期借入金3億円だけを引くと約108.43億円ですが、これは借入金のみを控除した参考値です。その他に含まれるリース等を含めた厳密なネットキャッシュや、すべて配当に回せる余剰現金を意味しません。

表は横にスクロールできます →

株価指標の基準を統一
項目数値定義
基準株価2,279円2026年10月9日終値
時価総額約104.65億円2,279円×発行済4,592,000株
BPS3,922.14円6月末純資産÷自己株式控除後株数
PBR約0.58倍2,279円÷3,922.14円
会社予想配当利回り約1.97%45円÷2,279円

BPSは決算短信の純資産17,944,487千円÷4,575,177株で再計算。EPS計算と同じ株数基準を用いています。

資産の宝探しでは「同じ宝を二度数えない」

有価証券報告書では、土地・保有株式・賃貸不動産の注記も確認したい項目です。大伸化学では、例えば次の資産が確認できます。

表は横にスクロールできます →

2026年3月末・提出会社単体の開示。6月末連結財務とは基準が異なります
資産帳簿価額読み方
越谷工場・兵庫工場の土地合計約18.93億円主要2工場の事業用土地。売却可能な余剰土地という意味ではない
純投資目的以外の保有株式合計約7.74億円非上場約1.54億円+非上場以外約6.20億円

これらの帳簿価額は、すでに純資産に含まれています。足すなら検証できる時価との差額を、税金・処分費用・事業で使う必要性まで考慮して評価します。市場価格のあるその他有価証券は時価評価されるため、取得原価との差をそのまま純資産へもう一度足しません。今回は土地の独自時価査定をしていないため、含み益を株価に上乗せしていません。

配当45円が会社予想。70〜88円は、どんな計算?

この表は、連結EPSに仮に25%を掛けた参考計算です。会社の配当算定式を再現したものではありません。増配を決めた発表とも区別します。

会社の公表予想は年間45円。配当性向25%程度を目安とする方針はありますが、「EPSが出たら必ず25%が配当になる」という自動計算の約束ではありません。

表は横にスクロールできます →

配当性向25%を使った機械的な計算
利益の仮定計算上の配当2,279円に対する利回り
会社EPS279.77円約70円約3.07%
EPS320円を仮定80円約3.51%
記事モデルA・EPS353.35円約88円約3.86%

利回りは表の整数配当額で計算。会社予想45円÷連結EPS279.77円で計算した比率は約16.1%。増配余地を考える入口になりますが、配当の変更は未決定です。

ゆずママのひとこと「増配できそう」と「増配を決めた」は別のニュース。期待額を楽しみつつ、公表予想45円を家計の計算の出発点にしたいですね。
配当性向の「単体」と「連結」、何が違う?

同じ前期配当45円でも、割る利益の範囲で数字が変わります。

前期2026年3月期の配当性向を照合
基準EPS45円÷EPS
単体187.67円約24.0%
連結194.39円約23.1%

有価証券報告書の配当方針欄は前期24.0%、決算短信の連結配当性向は23.1%。したがって、この記事の連結EPS×25%を、そのまま会社の将来配当と読むことはできません。配当は公表予想45円と今後の決定を確認します。

出典:[2]・[7]。単体・連結の比較は前期実績です。

出典・計算:[1] / [7] / [10] / [11] / [M]

12次の決算、最初の5分でここを見る

次の決算では、上方修正の有無だけを見るより、7〜9月の単独成績を出すと変化が見えます。中間期累計から4〜6月の実績を引くだけです。

7〜9月の営業利益 = 中間期営業利益 − 9.7534億円

表は横にスクロールできます →

次回決算で使う、答え合わせメモ
確認項目比較する目安判断が変わるポイント
7〜9月の営業利益会社計画の逆算:約4.25億円
記事モデルA:約5.39億円
数字に加え、単価・数量・在庫要因の説明を見る
7〜9月の粗利率記事モデルA:13.8%会社目標ではない。累計の粗利益・売上を差し引いて単独期を計算
中間期の製品出荷量記事モデルA:65,853tモデルの約3%減よりも需要が弱くなっていないか
下期の利益計画現行計画の逆算:営業利益5.60億円上期だけの上振れか、下期も引き上げるか
配当・中期計画配当予想45円、計画は策定中増配額、資金の使い道、収益目標と期限が具体化するか
営業CF・運転資金6月末は売上債権・仕入債務とも増加売掛金の回収、仕入債務の支払い、在庫の増減を確認

評価を上げる材料

数量が想定内に収まり、在庫効果が弱まっても利益率を維持。下期の利益計画や増配・資本配分が具体化する。

評価を下げる材料

売値が先に下がり粗利率が縮小。数量減と在庫増が重なり、来期の利益や現金創出力に不安が残る。

中期経営計画について、7月1日のガバナンス報告書は策定中と説明しています。ROE8%以上や配当性向25%程度などの方針はありますが、発表日・増配・自社株買い・TOBを決定事項として扱いません。

売買では板の厚さにも注意が必要です。10月9日の出来高は3,900株。小型株では、表示株価で希望数量を売買できるとは限りません。資産価値だけでなく、換金のしやすさも保有量を考える材料になります。

出典・計算:[1] / [10] / [11] / [M]

13よくあるギモンを、ここで解消

ナフサが下がれば、必ず増益しますか?

販売価格と在庫原価の動く速さ次第です。売値が先に下がれば値差が縮みます。数量、売値、原価をセットで見ます。

EPS353円は会社の予想ですか?

会社の通期EPS予想は279.77円です。約353円は10月6日に置いた仮定による記事モデルAの計算結果で、10月13日の市況を直接反映した最新予想ではありません。

下期の年率EPS249円は、来期予想ですか?

違います。記事モデルの下期EPS124.46円を2倍した点検用の数値です。季節性や翌期の相場が変わるため、持続利益が249円と確定したわけではありません。

株価3,000円は実現しますか?

将来株価は確定できません。例えば持続EPS300円×PER10倍なら3,000円ですが、両方に根拠が必要です。利益や評価倍率が下がれば、基準株価を大きく下回るケースもあります。

80円や88円への増配は決まっていますか?

決まっていません。会社予想は45円です。80円はEPS320円×25%、約88円は記事モデルのEPS約353円×25%という試算です。

なぜ今日の株価を使わないのですか?

比較の再現性を優先し、記事検証日の前営業日である2026年10月9日の確定終値2,279円を使います。価格は自動更新されません。

出典・計算:[1] / [10] / [M]

14ゆずママの結論:好決算の「次」を買えるか

大伸化学には、顧客に合わせた配合と供給の積み重ね、厚い資産、還元を考える余地があります。一方、今回の大幅増益をそのまま来期へ延長するには、確認したいことが残っています。

250円×9倍=2,250円。基準株価2,279円とほぼ同水準です。ここも説明用の仮定ですが、この組み合わせだけでは大きな割安余地は出ません。3,000円を考えるなら、持続EPSの改善かPERの上昇を説明する材料が必要です。
  • 事業を見る:有機溶剤の配合・供給が、顧客のものづくりを支える。
  • 利益を見る:売上金額だけでなく、数量と値差。1Qの追い風がどこまで残るか。
  • 株価を見る:今期のEPSと持続利益を分け、3,000円に必要な条件を逆算する。
  • 還元を見る:現預金の厚さに加え、運転資金と会社の意思決定を確認する。
「よく稼いだね」の次に、
「次も稼げそう?」を。

私の評価は注目継続。利益の持続性と還元の具体化がそろえば、評価を見直したい銘柄です。予想を当てること以上に、外れたときに考え直せる観察項目を持っておきます。

あなたなら、次の決算で最初に見るのは数量・粗利率・下期予想・配当のどれでしょう? その理由まで考えると、自分の「買いたい条件」がはっきりしてきます。

本記事は公開資料に基づく銘柄研究です。筆者の仮定や評価は将来の利益・配当・株価を保証せず、特定の取引を推奨するものではありません。株価指標の基準日は固定しています。

15出典・基準日・計算前提

数値をたどれるよう、会社資料と統計の確認先をまとめました。記事の更新日と、各データの対象期間は異なります。

数字の日付を確認する
記事更新日とデータの基準日
項目基準
株価・出来高2026年10月9日終値
1Q実績・期末BPS2026年6月末/4〜6月
会社予想・年間配当2026年8月7日公表
利益モデルの入力2026年10月6日設定・10月13日再計算
ナフサの到着分評価2026年10月13日10:00時点
シンナー詳細統計2026年7月確報まで
[1] 大伸化学・2027年3月期第1四半期決算短信(2026年8月7日)

表紙、添付2〜5・7頁。1Q実績、会社予想、配当、貸借対照表、株式数を確認。BPSは本文記載の純資産と自己株式控除後株数から再計算。

決算短信PDF ↗
[2] 大伸化学・2026年3月期決算短信(2026年5月14日)

前期の業績と製品出荷138,346tを確認。 表紙の連結EPS194.39円と連結配当性向23.1%も確認。

前期決算PDF ↗
[3] 大伸化学・製品情報、即納体制

約32,000種類の製品情報データベース、顧客別の開発・製造。会社Webサイトを10月13日確認。

オーダーメイド製品 ↗
[4] 日本塗料工業会・2026年4〜7月統計

経済産業省統計の集計。数量・販売金額・税込平均単価を各月PDFで照合。全国シンナー統計を会社の全製品と同一視しない。

統計一覧 ↗
[5] 日本塗料工業会・2026年8月速報

塗料2区分の合計を需要の補助材料に使用。シンナー自体の速報ではない。

8月速報PDF ↗
[6] AMEREX NAP REPORT・マーケット情報

10月13日午前10時:11月後半到着1,001.50ドル/t、前営業日比+44.00。3〜7月輸入価格は確報、8月87,550円/kLは速報。更新型ページのため後日表示は変わる。

市況・輸入統計 ↗
[7] 大伸化学・第74期有価証券報告書(2026年6月25日)

主要設備の事業用土地、純投資目的以外の保有株式、商品・製品・原材料の総平均法、市場価格のあるその他有価証券の時価評価を確認。土地の独自時価評価は実施していない。 PDF3頁の単体EPS、24頁の配当方針・前期配当性向24.0%を併せて確認。

有価証券報告書PDF ↗
[9] 大伸化学・2026年3月期中間期決算短信

前年中間期製品出荷67,875tとの比較。

前年中間期PDF ↗
[10] Yahoo!ファイナンス・大伸化学の株価時系列

2026年10月9日終値2,279円・出来高3,900株を10月13日確認。PER・PBR・利回りは記事で再計算。

日付別の株価 ↗
[11] 大伸化学・コーポレートガバナンス報告書(2026年7月1日更新)

1〜2頁:中計策定中・経常利益率5%程度、4頁:ROE8%以上・配当性向25%程度の方針。発表日・将来配当を確定した記載ではない。

ガバナンス報告書PDF ↗
[M] 記事モデルと独自計算

10月6日版の仮定を10月13日に再計算。各ケースは入力条件の違いを示します。353.35円は統計的な最頻値ではなく入力仮定の結果です。会社計画の下期は「通期−中間期」、7〜9月は「中間期−1Q実績」で逆算。年率換算は来期予想ではありません。

表示は本文で丸め、計算付録では精度を維持。株価の計算はEPS×PER、PBRは株価÷BPS、配当利回りは配当÷株価。会社予想・独自試算・説明用仮定を区別します。

計算を確かめる:数式と3ケースの全入力

金額は以下の前提表では百万円。製品売上=数量t×単価円/kg÷1,000。総売上=製品売上+商品等売上。営業利益=総売上×粗利率−販管費。経常利益=営業利益+営業外損益。将来期間の純利益=経常利益×66%。EPS=純利益×1,000,000÷4,575,177株。

実績4〜6月の営業利益975.340百万円・純利益679.305百万円は固定。将来の特別損益ゼロ、税率34%を仮定。

表は横にスクロールできます →

シナリオの全入力:金額は百万円、製品単価は税抜
ケース・期間数量t円/kg商品等売上粗利率販管費営業外
慎重 7〜9月30,9002751,45012.7%97018
慎重 下期64,8002702,85011.8%1,96030
モデルA 7〜9月32,2502891,54513.8%96018
モデルA 下期67,6502853,10012.3%1,92030
強気 7〜9月33,2003001,65014.5%95018
強気 下期69,2002963,35013.1%1,94030

モデルA・中間期:売上22,502.946、営業利益1,514.7445、純利益1,047.19197百万円。通期:売上44,883.196、営業利益2,347.51525、純利益1,616.620665百万円。丸め前EPSは中間期228.88556円、通期353.34604円。

下期年率EPS=569.428695百万円×2×1,000,000÷4,575,177株=248.92095円。下期粗利率1ポイントの利益感度=22,380.25百万円×1%=223.8025百万円。

本文の2つの操作欄は独立。ページを開き直すと初期値に戻ります。価格と利益の統計的な連動係数は推定していません。

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