ゆずママと学ぶ
株式投資クエスト
「安い株」と「お買い得な会社」は、どう違う?
身近なたとえと、入力して試せる計算機で、
会社を見る目をひとつずつ育てましょう。
株式投資の画面には、PER、PBR、EPS……と、アルファベットがずらり。「いきなり難しい!」と感じても大丈夫です。今日は架空の「ゆず商店」を教材にして、読む → 数字を変える → 理由を考えるの順番で進みます。
- 生活に必要なお金と、投資に回すお金を分ける。
- よい点だけでなく、損をする筋道も考える。
- わからないことは「未確認」のままにする。無理に結論を出さない。
学習時間の目安:じっくり45〜60分。最初は1〜4章と9章だけでも構いません。計算機の会社・株価・利益はすべて説明用の架空例で、実在銘柄の推奨や将来の予測ではありません。制度等の確認日:2026年10月4日。
計算機能:未起動。入力はできますが、計算・採点・メモ保存はまだ動作していません。保存後の記事プレビューでもこの表示のままの場合は、JavaScriptの貼り付けと保存を確認してください。
冒険マップ — 気になる章からどうぞ
株を買うとは、会社の一部を持つこと
株価は「1株の値札」。会社全体の大きさや、お買い得かどうかは、値札だけではわかりません。
ゆず商店が新しいお店を出したいとします。そこで資金を集め、出資した人に株式を渡します。株式を持つ人が株主です。会社が育つと株主も恩恵を受ける可能性がありますが、商売がうまくいかなければ損をする可能性もあります。
なお、証券取引所で既に発行されている株を買う場合、代金は通常その株を売る投資家に渡ります。そのつど購入代金が会社に入るわけではありません。
値上がり益
1株1,000円で買い、1,200円で売れば、差額は200円。100株なら2万円です。手数料・税金を引く前の数字です。
配当金
会社が株主へお金を分配する仕組み。1株30円なら100株で3,000円。無配や減配になることもあります。
株主としての権利
一定の条件で議決権などを持ちます。優待を実施する会社もありますが、優待は義務ではなく変更・廃止があります。
「100円の株」は「1万円の株」より安い?
値札だけなら100円の方が小さいですね。でも、100円の株が1億株ある会社と、1万円の株が10万株ある会社を比べると、会社全体についた株式の値段は逆になります。
| 会社 | 株価 × 株式数 | 時価総額 |
|---|---|---|
| A社 | 100円 × 1億株 | 100億円 |
| B社 | 1万円 × 10万株 | 10億円 |
時価総額=株価×発行済株式数。企業規模を見る出発点です。ただし、これも株式の値段であり、借金などを加味する企業価値の指標とは区別します。自己株式を除くかどうかで掲載データが違う場合もあるため、比較するときは定義をそろえましょう。
国内上場の普通株は、取引所では原則100株単位。1株1,200円なら100株で12万円です。証券会社によって単元未満株のサービスもありますが、注文方法・手数料・約定条件は異なります。「少額で試す」「買わずに記録する」からでも学べます。
制度の参考:JPX「売買単位」
PERとEPS:利益に対して、いくら払う?
EPSは「1株あたりの利益」。PERは「その利益の何倍の株価がついているか」です。
同じ1,200円の株でも、年に120円の利益を生む株と、40円の利益を生む株では、印象が変わります。ここでいう利益は会社全体の利益ではなく、普通株式1株あたりに直した当期純利益=EPSです。会社の売上高や、株主が実際に受け取る配当金とは違います。
たとえば株価1,200円、予想EPS120円なら、予想PERは10倍。「年間利益120円に対し、株価はその10倍」と読みます。10年で自分に投資元本が返る、と約束された数字ではありません。会社の利益は変動し、全額が配当されるわけでもないからです。
実績PER
過去の実際のEPSを使います。確定した数字ですが、すでに事業環境が変わっているかもしれません。
予想PER
会社予想や予想データのEPSを使います。将来を考えやすい一方、予想の修正で数値が変わります。
EPSを自分で概算するなら「普通株主に帰属する利益÷期中平均の普通株式数」が出発点です。ただし、自己株式、優先株、潜在株式などの調整があります。初心者はまず決算短信の「1株当たり当期純利益」「1株当たり当期純利益の予想」を確認し、株式分割後の基準をそろえましょう。
指標の着せ替え計算機
まずEPSを120円から60円へ。次にBPSを変えてみましょう。ひとつずつ変えると、どの指標に効くかがわかります。
自動計算は未起動です。入力はできますが、結果はまだ更新されません。
初期値での計算例:PER10倍/PBR0.67倍/利回り3%/配当性向30%/購入金額12万円。
会社予想・実績・株価の基準日をそろえて入力してください。表示数値だけで割安・安全を判定しません。
PERが低い会社を買えばいい、とは限らない
ゆず商店AはEPS100円で株価1,000円。PER10倍です。新しい商品を開発中のBはEPS20円で株価1,000円。PER50倍です。Aが必ず有利でしょうか? Bの利益が将来大きく伸びるなら、高い倍率にも理由があります。逆に、その期待が外れると大きく下がるかもしれません。
Aについても、今年だけ土地売却益が出ている、景気のピークで利益が膨らんでいる、主要顧客が離れそう、といった事情があれば、低PERには理由があります。
①同じ業種の会社、②その会社の過去の水準、③今後の利益見通し。成長性、利益の安定性、借金、金利環境も含めて考えます。「全業種共通の正解PER」はありません。
練習:株価は同じ、利益が半分になったら?
株価1,200円、EPS120円ならPER10倍。EPSが60円になるとPER20倍です。株価が動かなくても、割安さの見え方は変わります。上の計算機でEPSを120から60に変えてみてください。
定義の参考:JPX「株価収益率」
PBRとBPS:財産の「量」と「質」を見る
PBR1倍未満は「帳簿上の1株純資産より株価が低い」という意味。現金を安く買える保証ではありません。
ゆず商店には現金、商品、建物などがあり、借入金や仕入代金の未払いもあります。貸借対照表では、資産から負債を引いた部分が純資産です。そのうち普通株主に帰属する部分を1株あたりにした指標がBPS。連結では非支配株主持分などの調整があるため、単純に純資産合計を株数で割ると、公表BPSと一致しないことがあります。
値札は800円
株価800円、BPS1,000円ならPBR0.8倍。帳簿上の純資産に対して、2割低い価格がついています。
中身は現金だけ?
いいえ。売れにくい在庫、老朽化した工場、回収が難しい売掛金が含まれるかもしれません。資産の内訳を読みます。
帳簿価格と売却できる価格は同じとは限りません。解散には費用や税金もかかり、事業用資産は簡単に売れないことがあります。赤字が続けば純資産も減ります。PBRは株価の下限を保証しません。
低PBRの理由を2つに分けてみる
- 調べる価値がある理由:一時的な不振、資産の価値が伝わっていない、収益性の改善がまだ評価されていない。
- 慎重になる理由:慢性的な赤字、資産の質の悪さ、低収益事業への投資の継続、株主に価値が届く見通しの乏しさ。
現金100万円を預かったお店が、毎年1万円しか利益を出せなければ、効率は年1%です。現金が多いだけでは、高い評価につながらない場合があります。そこで、利益と自己資本の関係を見るROEにも目を向けます。
もう一歩:PBR・PER・ROEはつながっている
同じ株価、同じEPSとBPSを使えば、PBR=PER×(EPS÷BPS)という関係になります。たとえばPER10倍、EPS÷BPS=5%ならPBR0.5倍。低PBRは、低い収益性を反映している場合もあります。
ただし、通常公表されるROEは期首・期末平均の自己資本などを使うため、予想PER・期末BPSと組み合わせた「PER×ROE」が公表PBRとぴったり一致するとは限りません。借金や自社株買いで自己資本が小さくなってROEが上がる場合もあります。
定義の参考:JPX「株価純資産倍率」
EPS × PERで、3つの未来を描こう
利益が伸びる効果と、評価倍率が変わる効果を分けて考えると、期待とリスクが見えます。
PERの式を並べ替えると、株価=EPS×PER。これは同じ時点・基準の数値同士をつなぐ関係式です。未来のEPSとPERを自分で置けば「その仮定なら何円になるか」を計算できますが、その数字へ株価が動く法則ではありません。
| 変化 | 計算 | 想定株価 |
|---|---|---|
| 出発点 | EPS100円 × PER10倍 | 1,000円 |
| 利益だけ20%増 | EPS120円 × PER10倍 | 1,200円 |
| 利益増+評価上昇 | EPS120円 × PER15倍 | 1,800円 |
| 利益増+評価低下 | EPS120円 × PER8倍 | 960円 |
利益が増えても株価が下がるケースがあるのが、この表のポイントです。事前の期待が大きすぎた、金利が上がった、将来の成長への不安が出たなどの理由で、倍率が下がることがあります。
3つの未来シミュレーター
強気・基本・弱気のEPSとPERを自由に変えてください。名称は整理用で、確率や実現しやすさを示しません。
自動計算は未起動です。入力はできますが、結果はまだ更新されません。
初期値での計算例:弱気480円(−52%)、基本1,000円(±0%)、強気1,950円(+95%)。
黒字企業のPERを使う簡易モデル。EPSが0以下の評価には使えません。各シナリオの確率は未設定で、平均値や目標株価は提示しません。
シナリオは「願い」より「根拠」で置く
- 利益の根拠:販売数量×単価、原材料費、人件費、新店舗などに分ける。
- 倍率の根拠:同業他社・過去の評価・利益の安定性を確認する。
- 時間の根拠:その変化は半年後か、3年後か。同じ時点の仮定で比べる。
3年後に20%上がる想定と、1年後に20%上がる想定は同じではありません。この計算機の騰落率は設定した時点までの単純な株価変化率で、年率ではありません。配当や税金、売買コストも含めていません。
決算書は「儲け・財産・現金」の3枚の地図
利益が増えている、財務が健全、現金も回収できている。この3つをセットで確認しましょう。
損益計算書
PL:1年間の成績表
売上から費用を引いて、どれだけ利益が残ったか。売上だけでなく営業利益・純利益を見ます。
貸借対照表
BS:ある日の財産表
現金・在庫・不動産などの資産と、負債・純資産。財務の余裕や資産の質を見ます。
キャッシュ・フロー
CF:現金の流れ
本業、投資、借入・返済などで、実際に現金がどう増減したかを見ます。
売上100 → 営業利益10 → 最終利益7
ゆず商店が100万円売り上げ、仕入れ・人件費・家賃などに90万円使えば、営業利益は10万円です。さらに支払利息、特別な利益・損失、税金などを経て、最終利益が7万円だったとします。「売上が10%増えた」と「利益が10%増えた」は違う話だとわかりますね。
黒字なのに、お金が足りない?
商品を売っても、入金が3か月後なら、売上と利益が先に計上されて現金はまだ入っていません。一方、仕入れ代金や従業員の給与は支払う必要があります。利益だけでなく、営業CF、売掛金、在庫の増え方を見る理由です。
| 見る項目 | よくある見落とし | 次に確認すること |
|---|---|---|
| 売上・営業利益 | 値上げで売上増でも数量は減少 | 数量・単価・利益率の変化 |
| 当期純利益 | 不動産売却益で一時的に急増 | 特別損益、本業の利益 |
| 在庫・売掛金 | 売上以上の増加が続いている | 事業拡大の準備か、滞留か |
| 営業CF | 1年だけ良い・悪いを断定 | 3〜5年の累計と増減理由 |
| 借入金 | 総額だけ見て返済時期を見ない | 返済期限、金利、使途、現金残高 |
| のれん | 買収した事業の不振を見落とす | 買収後の利益・減損の可能性 |
「自己資本比率40%以上」「営業利益率10%以上」が万能ではない理由
必要な資本や利益率は業種で違います。薄利多売の小売、設備投資の大きい製造業、金融業を同じ物差しで合否判定すると、強い会社を見逃すことがあります。金融業では、預金・借入の意味も一般事業会社と違います。
まず同業と比べ、次にその会社の推移を見ます。数字が悪化したときも、成長投資の準備なのか、競争力の低下なのかを分けましょう。基準を満たすだけでは買う理由になりません。
有価証券報告書で「隠れた資産」と落とし穴を探す
賃貸不動産・事業用不動産・保有株式。帳簿に見える数字の先を調べると、会社の見え方が変わります。
決算短信がダイジェストなら、有価証券報告書(有報)は詳しい地図です。会社のIRサイトやEDINETで開けます。最初から全部を読む必要はありません。PDFや画面内検索で「賃貸等不動産」「主要な設備」「投資有価証券」「政策保有株式」「関連当事者」を探すと、入口が見つかります。
| 資産・項目 | 有報で探す場所の例 | 読みどころ |
|---|---|---|
| 賃貸不動産 | 注記「賃貸等不動産関係」 | 帳簿価額、時価、賃貸損益、評価時点 |
| 自社の土地・建物 | 「主要な設備の状況」など | 所在地、面積、帳簿価額、事業での用途 |
| 保有株式 | 「有価証券関係」「株式の保有状況」 | 時価・取得原価・評価差額・保有目的 |
| 親会社等への貸付 | 「関連当事者情報」など | 金額、貸付条件、回収可能性、資金用途 |
| 現金・有利子負債 | BS、借入金等明細表など | 使途制約、返済時期、リース債務の扱い |
① 賃貸不動産:帳簿8億円、時価16億円なら?
差額8億円は、資産価値を考える手がかりです。ただし、その8億円が直ちに株主の財布に入るわけではありません。売却時の税金・費用、売却後に失う賃料収入、実際に売る方針があるかも確認します。借入金や他の負債を忘れてはいけません。
② 自社の工場・本社:同じ地域の地価だけで決めない
昔取得した土地には含み益がある場合があります。一方、会社を動かすために必要な土地なら、簡単には現金化できません。移転費用や解体費用、土壌汚染、用途制限もあります。住所がわかるだけで、売却額を断定しないことが大切です。時価が開示されていないなら「未確認」と明記しましょう。
③ 保有株式:いちばん多い落とし穴は二重計上
日本基準で時価評価される「その他有価証券」の評価差額は、原則として税効果を調整して純資産に反映されています。すでに純資産へ反映された含み益を、もう一度足すと資産を過大評価します。適用される会計基準・保有区分・連結範囲・評価時点を確認してください。
現金も保有株式も、通常は既に貸借対照表の資産に入っています。純資産から調整するなら、原則はまだ反映されていない差額だけ。事業価値に余剰資産を加える方法でも、利益に含まれる賃料や受取配当との重複に注意します。
資産の中身を考える計算機
普通株主に帰属する純資産に、まだ反映されていない不動産評価差額だけを加減する練習です。これは清算価値や適正株価の鑑定ではありません。
自動計算は未起動です。入力はできますが、結果はまだ更新されません。
初期値での計算例:ネットキャッシュ12億円。参考純資産は30億円+8億円×70%=35.6億円、参考BPS1,780円。
簡易ネットキャッシュは現金+有価証券−有利子負債。比較用の株式価値は株価×自己株式を除く株数と定義。不動産の含み益は控除率を適用し、含み損は税効果を見込まず全額を差し引きます。有価証券の含み益は追加しません。
ネットキャッシュは「財布の余裕」を見る入口
この教材では、現金・預金+換金性の高い有価証券−有利子負債を簡易ネットキャッシュと定義します。現金だけを使う方法など定義は複数あるので、会社同士の比較ではそろえます。銀行・保険などの金融業に、この一般事業会社向けの式をそのまま当てはめないでください。
ネットキャッシュが多くても、仕入れや給与に必要な運転資金、大きな設備投資、年金・退職給付、リースや保証などの負担があるかもしれません。全額を余剰資金と決めず、実際に使える額と、使い道を調べます。
有報を読む順番がわからないときは、この5か所から
- 事業の内容:何を、誰に売る会社か。
- 経営方針・経営成績:会社が何を目標にしているか。
- 財務諸表と注記:利益、借金、資産の中身。
- 大株主・株式の保有状況:支配関係、政策保有株式。
- 事業等のリスク:何が起きると困る会社か。
同じ会社でも連結と単体で数字が違います。原則として会社全体を見る連結を基本にし、資産や取引の詳しい説明で単体も確認します。金額の単位が「千円」「百万円」で違う点にも注意しましょう。
参考:ASBJ 「賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準の適用指針」/「金融商品に関する会計基準」/金融庁 EDINET。時価と帳簿価額の差額を使う計算は学習用の簡略モデルです。
配当・優待はうれしい。でも損益は合計で見る
配当利回りだけでなく、利益から配当を払えているか、株価変動を合わせた結果も確認しましょう。
配当利回り
年間1株配当÷株価×100
株価1,200円、配当36円なら3%。「今の価格で買った場合」の利回りです。
配当性向
年間1株配当÷EPS×100
EPS120円、配当36円なら30%。利益のどれくらいを配当に回すかを見ます。
株価が急落した結果、予想配当利回りが高く見えることもあります。利益が落ちているのに配当予想がまだ変わっていない場合、減配の可能性を考えます。配当性向100%超や赤字での配当も、1年だけで判断せず、特別配当なのか、資金に余裕があるのか、継続可能かを調べましょう。
配当と値動き、まとめて計算
配当をもらっていても、株価が下がると合計でマイナスになる場合があります。1年間保有し、1年分の配当をすべて受け取る仮定で比較します。
自動計算は未起動です。入力はできますが、結果はまだ更新されません。
初期値での計算例:100株、配当36円なら税引前3,600円・税引後約2,869円。株価10%下落で値下がり損12,000円。合計は約−9,131円。
「値動き+受取配当」は売却益の税金・売買手数料を差し引く前です。課税口座でも損益通算・還付を計算しません。正確な確定申告額を計算するツールではありません。
優待は「自分が実際に使う価値」で計算
「5,000円相当」の品でも、普段なら買わないものなら、自分にとって5,000円の節約になるとは限りません。100株と500株で優待が変わる場合は、追加資金に対して何が増えるかを確認します。権利月だけでなく、保有株数・継続保有条件・権利付き最終日も会社や証券会社で確認しましょう。
権利落ちでは、他の条件が同じなら配当分の価値が株価から調整される理屈があります。ただし、実際の値動きは同時に市場の影響も受けます。「配当をもらう直前に買えば必ず得をする」仕組みではありません。
税率の参考:国税庁「上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度」。課税方法や大口株主等の例外により扱いは異なります。
「安い理由」と「変わるきっかけ」をセットで考える
カタリストは、企業の価値や市場の評価を変えるきっかけ。発生も株価上昇も確約されていません。
地味なお店が、新商品でお客さんを増やしたり、不採算店を閉じて利益率を上げたりする。こうした変化が、会社の見方を変えるきっかけになります。投資ではそれをカタリストと呼びます。
| 変化の候補 | 確かめたい証拠 | うまくいかない筋道 |
|---|---|---|
| 利益の改善 | 値上げの浸透、受注、利益率の推移 | 原価上昇、販売減、競争激化 |
| 株主還元 | 配当方針、自己株取得の規模・期間・実績 | 既に期待済み、投資余力の低下 |
| 資産の活用 | 遊休不動産や政策保有株式の売却方針 | 実行されない、売却後の収益減 |
| 事業の見直し | 不採算事業の整理、資本配分の変更 | 損失計上、再建の遅れ |
| TOB・再編 | 公表された提案・条件・進捗 | 不成立、条件変更、期待の剥落 |
低PER・低PBRのまま、何年も動かないことがある
「安いのに上がらない会社」を買って、長く待ち続ける状態を、バリュートラップ(割安の罠)と呼ぶことがあります。利益が減り続ければ、最初に安いと思った価格が、後から高く見えることもあります。
ここで大切なのは「市場が間違っている」と決めつけず、市場が何を心配しているのかを考えることです。流動性の低さ、親会社との利害、経営者の資金の使い方、株主への説明不足なども手がかりになります。
東証はプライム・スタンダード市場の全上場会社に、資本コストや株価を意識した経営への対応を要請しています。PBR1倍未満の会社だけが対象ではありません。2026年4月には、経営資源の配分等を中心に要請が更新されています。
趣旨は現状分析、計画、開示、対話、継続的な改善です。一度きりの増配や自社株買いだけを求めるものではありません。コーポレートガバナンス・コードとも関連しますが、同一の制度ではありません。
「いつまでに、何が変わるか」を書く
「いつかTOBされるかも」だけでは、期待を更新し続けてしまいます。「次の決算で営業利益率を確認」「中計の期限に資産売却の実行を確認」など、観察する数字・資料・時期を決めましょう。期限が来ても根拠が増えなければ、保有の理由を見直す材料になります。
自社株買いなら、いつもお得?
会社が自社株を買うと、自己株式を除く株数が減り、利益が同じならEPSが上がる方向に働きます。一方で、現金が減り、買付価格によって効果も違います。将来の事業に必要な投資を削っていないか、発表した上限まで買う義務があるのか、実際の取得状況はどうかを見ます。発表だけで評価を決めないことが大切です。
リスク管理は、株価より先に「買う量」を考える
大きく下がる可能性を、割合だけでなく金額でも見る。続けられる量で持つことが大切です。
30%の下落でも、投資額が10万円なら3万円、1,000万円なら300万円です。「この会社は好き」と「この金額を持てる」は別に考えます。生活費や数年以内に使う予定のお金を、株の値動きに預けないことが出発点です。
下がったとき、何円減る?
1社だけが下がり、ほかの資産は値動きしない仮定です。下落率と投資額を変えて、生活への影響を考える練習をします。
自動計算は未起動です。入力はできますが、結果はまだ更新されません。
初期値での計算例:10万円の投資が30%下がると3万円減少。総額100万円の3%。元の株価へ戻るには約42.9%の上昇が必要。
逆算額=損失予算÷想定下落率。ただし投資用資金の総額を上限とする算術上の参考値で、推奨投資額ではありません。株価の急変・相関・売却できないリスクは別途あります。
市場と自分の気持ちは、振り子のように揺れる
上がり続けると「もっと買わなきゃ」、下がり続けると「全部売らなきゃ」と感じやすくなります。振り子のイメージは、自分の感情を客観的に見る道具です。これだけで天井・底を当てられるわけではありません。
今の気持ちは、どちら寄り?
自動表示は未起動です。スライダーを動かしても、説明はまだ更新されません。
市場データを読み取る指標ではありません。自分の状態に合わせた確認のヒントです。
悲観に傾いたとき
株価だけを見ず、買ったときの前提が崩れたかを確認。怖いから即売却、安くなったから即買い増し、と決めないようにします。
楽観に傾いたとき
強気シナリオだけになっていないか、1社の比率が増えていないかを確認。好材料が既に値段に含まれる可能性も考えます。
5つのリスクを分けると、対策が見える
- 会社のリスク:商品が売れない、不祥事、財務悪化。複数企業を調べる。
- 市場のリスク:景気悪化や金利変化で、多くの株が一緒に下がる。株以外の資金も含めて配分を考える。
- 集中のリスク:銘柄数が多くても、同じ業種や顧客に偏る。影響する要因を重ねて確認する。
- 流動性のリスク:売りたいときに希望価格で売れない。小型株は売買高と売買の気配も見る。
- 自分のリスク:借金・焦り・生活資金の投入。最初は現物・少額で理解を積み重ねる。
急落や売買停止では、想定した価格で売れないことがあります。下落率の仮定を超える損失もありえます。買う前に金額を抑える、複数の資産に分ける、といった備えを組み合わせます。
長期・積立・分散。そしてNISAの役割
長く続ける仕組みと、税金の制度を理解する。どちらも元本を保証するものではありません。
個別株を分析するのが好きな人も、すべてのお金を個別株に振り向ける必要はありません。幅広い企業に投資する投資信託などを組み合わせる方法もあります。まずはいつ使うお金か、どの程度の値動きに耐えられるか、費用はいくらかを考えましょう。
長期
利益を再投資する時間を確保します。ただし、長く持つだけで悪い事業がよくなるわけではありません。
積立
買う時期を分けることで、一度に高値で全額買うリスクを和らげます。下落相場での損失はありえます。
分散
企業・業種・地域・資産を分けます。全体が同時に下がることもあり、組み合わせの中身が大切です。
時間と積立のシミュレーター
年率3%と0%、さらにマイナスの年率も比べてみましょう。元本と運用成果を分けて表示します。
自動計算は未起動です。入力はできますが、結果はまだ更新されません。
緑:運用後金額 / 破線:積み立てた元本。金額の目盛りは万円。
初期値での計算例:10万円から毎月1万円を20年積み立てると、元本250万円。仮定年率0%なら最終金額も250万円。
月利=(1+年率)^(1/12)−1。毎月の運用後に月末積立。収益は再投資。毎年一定の成績を仮定した計算で、実際の値動きの順序は反映しません。税金・費用・物価上昇・NISA枠の制約は未反映。
NISAは「税金の箱」。中に入れる商品は自分で選ぶ
NISAでは、対象商品の売却益や配当・分配金が一定の条件で非課税になります。制度の枠を使えば自動的に利益が出るのではなく、何を、いくら、どの目的で持つかが先です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 年間投資枠 | つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円=最大360万円 |
| 非課税保有限度額 | 取得価額ベースで1,800万円。そのうち成長投資枠は1,200万円まで |
| 非課税保有期間 | 無期限 |
| 売却後の枠 | 売却した商品の取得価額分を、翌年以降に再利用可能。年間投資枠は別に適用 |
| 個別株の扱い | 成長投資枠の対象銘柄で利用。つみたて投資枠の対象ではない |
NISAで国内上場株の配当を非課税で受け取るには、原則として証券会社で受け取る株式数比例配分方式が必要です。また、NISA口座の損失は課税口座の利益と損益通算できず、繰越控除もできません。口座や商品の条件は、金融機関の案内で確認してください。
会社を見つけて、調べて、注文するまで
スクリーニングは候補探し。その後に「商売の中身」「数字の理由」「買う量」を調べます。
- わかる商売から選ぶ
使ったことのあるサービス、住んでいる地域の企業などを入口に。「誰が、何にお金を払う会社?」を一文で書きます。好きな商品でも投資先として有利とは限りません。 - 候補を数社に絞る
業種・規模・利益推移・財務・PER・PBRを比較。例えば低PERを条件にしても、それだけで合格にはしません。赤字でPERが出ない会社が除外される点も意識します。 - 会社の一次資料で確かめる
会社IRの決算短信、決算説明資料、有価証券報告書、適時開示を読みます。SNSの話は「調べるきっかけ」に使い、結論の根拠は資料へ戻します。 - 強気・基本・弱気を書き分ける
どんな変化を期待し、何が起きたら前提が崩れるか。次に確認する決算や開示の時期もメモします。 - 金額と注文条件を決める
手数料、売買単位、注文の有効期限、指値か成行かを確認。最初から大きな資金を一度に投入する必要はありません。 - 買った後も理由を点検する
株価の上下だけでなく、利益、財務、資本配分の変化を記録。予想が外れたことを責めるより、どの仮定が違ったかを学びます。
指値注文
買う価格の上限などを指定します。希望より高く買うのを避けやすい一方、条件に届かなければ買えません。
成行注文
価格を指定せず注文します。売買が成立しやすい一方、特に売買の薄い銘柄や相場急変時には、思わぬ価格になることがあります。
「買わない理由」も1つ探してみる
気に入った会社ほど、よい情報だけ集めがちです。競合の説明資料も読む、過去の会社目標と実績を比べる、不振時の利益を確認する。少し視点を変えるだけで、期待の偏りに気づけます。
割安指標に加えて、日々の出来高、大株主、親会社との取引、経営者の資本配分、株主還元の実績を確認します。少人数にしか知られていないことは、必ずしも有利とは限りません。情報を集める手間や、売りにくさも引き受ける投資です。
買う前に、1枚の投資メモを作ろう
採点するのは「調査の進み具合」。点数が高くても、割安・安全・買いを意味しません。
ここでは、5つの視点から事実を確認できたかをチェックします。「まだ知らないこと」が見えると、次に読む資料や調べる数字が決まります。1項目でも大きな懸念があれば、それを優先して検討してください。
5つの視点 × 3つの確認
確認済み 0 / 15項目
これは調査の進捗です。企業の品質や投資判断を自動評価するものではありません。
この教材のコードは入力を外部送信しません。「この端末に保存」を押した場合だけ、メモとチェックをこのブラウザーに保存します。共有端末には個人情報を残さないでください。保存機能が使えない環境では、テキスト出力を利用できます。ブログ側の解析機能等は別です。
6問で復習。「なぜ?」まで説明できるかな
間違えた問題こそ復習のチャンス。答えを選んで解説を読んでみましょう。
答え合わせは学習用です。投資の実力や収益を判定するものではありません。
よくある疑問と、用語の早見表
Q. 初心者は、いくらから始めればいい?
一律の正解はありません。生活資金や近いうちに使うお金を分けた後で、「大きく下がっても生活が変わらない額」を考えます。単元未満株や少額の投資信託で学ぶ方法もあり、まずは買わずに調査メモを作るだけでも意味があります。
Q. 株価が下がったら、安く買い増せばいい?
同じ価値のものが安くなったのか、事業の価値自体が下がったのかを区別します。買い増しは1社への集中を強めます。最初の判断を正当化するために追加資金を入れず、弱気シナリオと全体の比率を再確認しましょう。
Q. PBR2倍の会社は、PBR0.5倍より割高?
帳簿上の純資産に対する倍率は高いですが、それだけで投資先として不利とは言えません。ブランド、技術、顧客基盤など、帳簿の純資産に十分表れない強みもあります。収益性、成長、リスクを含めて比べます。
Q. PERがマイナス、または「—」になるのは?
EPSが赤字やゼロのとき、通常の黒字企業と同じ意味でPERを比較できません。この教材も「算出しない」と表示します。赤字の理由、手元資金、黒字化までの期間や不確実性など、別の分析が必要です。
Q. 決算がよかったのに、株価が下がったのはなぜ?
投資家の期待に届かなかった、次の期の見通しが弱かった、既に株価が上がっていたなど、いくつもの可能性があります。「前年より増益」と「市場の期待よりよい」は別です。後付けの説明を断定せず、開示と値動きを分けて記録します。
Q. いつ売るかも、買う前に決めるの?
厳密な売値を先に決めなくても、「前提が崩れた」「価格が強気の評価まで上がった」「1社の比率が大きくなりすぎた」「使う時期が近づいた」といった見直し条件は書けます。含み損を取り返したい気持ちだけで保有し続けないようにします。
| 用語 | やさしい意味 |
|---|---|
| EPS | 普通株式1株あたりの当期純利益 |
| PER | 株価÷EPS。利益に対する値段 |
| BPS | 普通株主に帰属する1株あたりの純資産 |
| PBR | 株価÷BPS。帳簿上の純資産に対する値段 |
| ROE | 自己資本に対し、どのくらい当期純利益を生んだか |
| 営業CF | 本業に関わる活動での現金の増減 |
| ネットキャッシュ | 現金等から有利子負債を引いた余裕を見る指標。定義の確認が必要 |
| カタリスト | 企業の価値や市場の評価が変わるきっかけ |
| バリュートラップ | 割安に見えても、改善が進まず期待が実現しない状態 |
| 資本コスト | 会社が資金を調達して使ううえで、投資家等から求められる収益率 |
今日のゴールは「1社を説明できる」こと
何で稼ぐ会社なのか。なぜその値段がついているのか。何が変わると考えるのか。そして、どこで自分が間違うか。
この4つをメモにできたら、投資の冒険はもう始まっています。すぐに買わなくても大丈夫。ひとつ調べて、ひとつ試して、自分の判断を少しずつ育てていきましょう。
出典・数値・計算方法について
本文の事例・初期入力値は架空の学習用データです。株価を自動取得する機能やAIによる銘柄の自動判定はありません。制度・用語の参照先は各章に記載しました。制度等の確認日は2026年10月4日です。
- 指標:株価÷EPS、株価÷BPS、1株配当÷株価、1株配当÷EPS。EPS・BPSがゼロ以下のときは該当倍率を表示しません。
- シナリオ:入力したEPS×PER。株価変化率は(想定株価÷現在株価−1)×100。確率・期間・配当は自動推定しません。
- 資産:純資産に未反映の不動産評価差額を調整する簡略モデルです。含み損の税効果は見込まず、一般事業会社の学習用です。
- 配当:課税口座は20.315%を用いた概算。1年分の配当を受け取る仮定で、実際の権利取得や受取時期・税額の端数処理は反映しません。
- リスク:他の保有資産の価格が変わらないと仮定した1銘柄の影響です。損失がこの範囲で止まるとは限りません。
- 積立:年率から等価月利を計算し、毎月末に積み立て、収益を再投資。税金・手数料・インフレは除外。年率は一定と仮定した比較です。
表示時に丸めるため、内訳の合計と表示値がわずかにずれる場合があります。実際の投資前には最新の会社資料と制度を確認してください。
