外債・社債・銀行債の基本|長期債のリスク・格付け・買い方を図解

その利息、何の対価? 外債・社債・銀行債と長期債のリスクを学ぶ、ゆずママのお金の教室。 本文HTMLには画像の埋め込みをしていないため、WordPressのアイキャッチと重複しません。

YUZU MAMA’S MONEY NOTE 債券のしくみと、リスクの読み方

その利息、
何の対価?

外債・社債・銀行債。
長く持つリスクと、お金が戻る条件をやさしく図解。

長期債の値動き円高の影響格付けと売買コスト

ゆずママ | 制度・出典の確認:2026年10月29日
数字は仕組みを学ぶための仮定です。販売中の利率や将来予測ではありません。

こんにちは、ゆずママです。
「株はちょっとこわいから、利息の高い債券へ」。そう考えたときこそ、利率の隣にある満期・通貨・返済順位を見てほしいと思います。

同じ「債券」でも、短い円建て社債、30年の米国債、銀行の永久劣後債では、引き受けるリスクが違います。この記事のゴールは、買う前に「何が起きると、いくら減り、いつ使えなくなるか」を説明できることです。

通読の目安は約30分。まず仕組みをつかむなら、長期債の値動き → 格付けの読み方 → 買値・売値と経過利子の3章からどうぞ。

記事全体の目次を開く 全11章・計算ツール3つ
  1. 外債・社債・銀行債の地図
  2. 利率と利回り、高い利息の理由
  3. 長期債の金利リスクを体験
  4. 外債の為替リスクを体験
  5. JCR・S&Pと格付け別デフォルト率
  6. 銀行債のランクとTLAC
  7. AT1・CoCo・コールの読み方
  8. 満期保有・債券投信の注意点
  9. 既発債の買い方・売り方と経過利子
  10. 購入前の確認と資金の分け方
  11. よくある疑問とまとめ
  12. 出典と計算条件

01 / まずは、地図を持とう

「誰に貸すか」と
「何の通貨で戻るか」を分ける。

社債は、会社がお金を借りるために発行する債券です。投資家は契約に従って利息や償還金を受け取ります。株式と違い、会社の持ち主になるわけではありません。

同じ会社でも、円建てとドル建てではリスクが変わる
お金を貸す相手円で受け取る外貨で受け取る
国円建ての日本国債など米ドル建て米国債など
会社・金融機関円建て社債・銀行債など米ドル建て社債・銀行債など

外債は、発行体・通貨・発行場所のいずれかが外国に属する債券。円建て外債もあるため、「外債=必ず外貨建て」ではありません。本記事の為替計算は、元本・利息ともドル建ての単純な債券を想定します。[3]

額面

満期に返すと定めた金額。買った値段と一致するとは限りません。

クーポン

額面に対する利率。額面100万円・年4%なら税引前年4万円。

残存期間

今から満期までの長さ。20年債でも、残り1年なら見るべき期間は1年です。

02 / 金利の数字を、ほどく

「年5%」だけでは、
お買い得かどうかは決まりません。

債券の評価に使う利回りは、大づかみに同じ通貨・近い期間の基準金利+信用や流動性などの上乗せと考えられます。この上乗せは、一般に「信用スプレッド」と呼ばれます。高い利回りには、長く待つことや、返済への不安を引き受ける対価が含まれます。

同じ通貨・近い残存期間・同じ時点で比べる
基準となる金利3%
上乗せ2ポイント
評価利回り5%

説明用の仮定。上乗せは予想損失だけでなく、流動性・需給・契約条件なども反映します。異なる通貨の金利をそのまま引き算して、信用力の差とは判断できません。

「スプレッド」は、何と何の差かで意味が変わる
名前何の差?見る数字・読み進める先
信用スプレッド国債等の基準金利への上乗せ利回り%ポイント・bp(1bp=0.01%ポイント)
売買スプレッドあなたが買う価格と、売る価格の差額面100あたりの単価差 → 売買の章
為替スプレッド円と外貨を交換する際の買い・売りレートの差1ドルあたりの円など。債券の単価差とは別

利率・直接利回り・最終利回りの違い

額面100、年間利息4の債券を90で買うと、クーポンは4%のまま。買値に対する年間利息は4÷90=約4.44%で、これが直接利回りです。満期までの収益を考えるときは、償還金と買値の差、残りの年数も含めた最終利回りを確認します。

高いクーポンでも、高値で買えば利回りは下がる。

額面100を105で買った債券が100で償還されれば、償還金だけでは買値を下回ります。利息を含む総額で比べること。売買価格差、経過利子、税金、両替費用も支払総額と手取りに影響します。

もう一歩:最終利回りの数字にも、前提があります

単利表示か複利表示か、税引前か税引後かをそろえて比較します。複利の最終利回りを、最終的な複利運用成果として実現するには、途中の利息の再投資条件も関係します。利払いの停止やデフォルト、予定外の売却が起きれば、表示された利回りは実現しません。

途中で発行体が返せる債券では、満期までの利回りだけでなく、期限前償還までの利回りも見ます。後ほど「コール」で説明します。[4]

03 / この記事の核心

長い債券は、
金利の小さな変化で大きく動く。

年2%の固定利息が付く債券を持っているとき、同じ条件の新しい債券が年3%で買えるようになったら、古い債券は値段が下がらないと選ばれにくくなります。これが市場の利回りが上がると、固定債の価格が下がる基本の関係です。[2・5]

利率年2%・額面100・半年払いのモデル

評価利回りが 2% → 3% になったら

残存3年−2.85%

価格 97.15

残存10年−8.58%

価格 91.42

残存30年−19.69%

価格 80.31

利払直後に、時間を進めず利回りだけを変更した理論価格。税・費用・信用損失なし。同じ利率・信用条件で比較しています。すべての30年債が同じ幅で動くという意味ではありません。

30年債の例では、100万円分の時価が約80.3万円に。年2万円の税引前利息に対し、値下がりは約19.7万円です。利息を受け取っていることと、資産全体で利益が出ていることは違います。

なぜ長期・低クーポンほど敏感になる?

遠い将来に戻るお金ほど、今の価値に割り引く金利の影響を長く受けます。同じ残存期間なら、途中で受け取る利息が少ない債券ほど、遠い満期の償還金に価値が偏ります。長期の低クーポン債や、途中の利息がないゼロクーポン債は、この点に注意が必要です。

動かして理解する 01

金利と信用スプレッドを動かそう

3つの債券は、どれも利率年2%・価格100から出発。金利上昇と信用スプレッド拡大は、どちらも評価利回りを押し上げます。

評価利回り 3.0%2% + 金利の変化 + スプレッドの変化

残存3年97.15−2.85%
残存10年91.42−8.58%
残存30年80.31−19.69%

価格は額面100あたり。バーは共通の縮尺0~160、縦線が価格100。

半年複利で将来の利息・償還金を割り引くモデル。各債券の利回りが同じ幅で動く仮定です。デフォルト時の回収額、AT1の元本削減、コールは計算しません。個人向け国債の中途換金制度には、この値動きを当てはめません。

デュレーションは「何年債」と同じではありません

修正デュレーションは、金利変化に対する価格の敏感さの目安です。例えば修正デュレーションが9なら、利回りが0.5%ポイント上がったときの価格変化は、おおむね−9×0.005=−4.5%と見積もれます。

小さな金利変化に対する近似であり、大きな変化では誤差が広がります。コール付き債券などは、金利に応じて将来の返済時期も変わるため、実効デュレーションなどで見る必要があります。短いデュレーションでも、信用・為替リスクが小さいとは限りません。[5]

04 / 外貨の利益を、円で確かめる

ドルで4%増えても、
円では6.4%減ることがある。

150万円を1ドル150円で1万ドルに替え、利息を含むドル資産が1年後に4%増えたとします。円に戻すとき1ドル135円なら、1万400ドル×135円=140万4,000円。円では9万6,000円のマイナスです。

ドルでの増減と、為替を掛け合わせる
ドル資産 1.04倍ドル円 0.90倍円資産 0.936倍

税・費用を除く説明例。価格変動がないなら、年4%の利息込みでの損益分岐は1ドル約144.23円。利息だけで吸収できる為替変化には限度があります。

さらに債券価格も下がれば、影響が重なります。価格20%下落とドル円10%下落なら、利息を除く円換算の値下がりは28%。20%+10%と足すのではなく、0.8×0.9で計算します。

動かして理解する 02

利息・債券価格・為替をまとめて試算

額面どおりに買ったドル建て債券を1年後に売り、1年分の利息も同じ為替で円に戻すモデルです。

例ボタンは、購入額150万円・購入時150円・年4%も含めて設定します。

利息を含めて円に戻る金額

140.4万円

円での損益−9.6万円
円での収益率−6.40%
ドルでの収益率+4.00%
損益分岐のドル円144.23円

ドルで増えても、円高により円では元本を下回る例です。

税・両替費用・売買価格差・経過利子・再投資を除外。債券価格の変化は利息を含まない値です。満期前売却を含む仮定で、将来の為替・債券価格・回収額を予測しません。損益分岐の為替は、入力した価格・利息が実現する条件での計算値です。入力情報は送信・保存しません。

外貨のまま受け取れば、為替リスクはなくなる?

円への両替時期を選べても、円で使うときの価値は変わり続けます。「円に戻していないから損ではない」と、生活費としての価値まで固定して考えないこと。

一方、将来のドル支出に合わせてドル資産を持つ考え方はあります。使う通貨と保有通貨をそろえる目的と、高金利を取りにいく目的を区別します。為替ヘッジ付き商品も、ヘッジのコストや価格変動・信用リスクまで消えるわけではありません。[2・12]

05 / 社債は、会社に貸すお金

有名な会社でも、
返済する力は確かめる。

信用リスクは、会社が約束どおり利息や元本を払えなくなるリスクです。倒産する前でも、業績や資金繰りへの懸念が強まれば、投資家が求める上乗せ利回りが広がり、社債価格が下がることがあります。[1]

01

現金は生まれている?

利益だけでなく営業キャッシュフロー、設備投資、使途が制限された資金を確認。

02

返済が集中していない?

手元資金・借入枠と、今後の借入返済・社債償還の山を比べる。

03

利息の負担は重くない?

利益・資金収支に対する金利負担と、借り換え時の金利上昇を確認。

04

誰が保証している?

担保・保証・劣後条件・財務制限条項を読む。大企業グループでも自動的な親会社保証はない。

「信用格付け」と「返済順位」は別のもの。

見ているもの例読み取ること
信用格付けAAA、A、BBB、BBなど元利金を払う信用力についての格付会社の意見
債券の返済順位シニア、劣後など財産が足りないときに、どの債権より先・後に返すか

S&Pの長期格付けでは、一般にBBB−以上が投資適格、BB+以下が投機的と区分されます。ただし、投資適格は元本保証ではなく、格付けは変更されます。会社全体を見る発行体格付けと、購入する債券そのものの個別債務格付けも区別しましょう。[9・10・13]

JCRとS&P。同じ「A」なら、同じ安全性?

同じ記号でも、格付会社をまたいで機械的に換算はできません。JCR(日本格付研究所)とS&P Global Ratingsは、それぞれの基準と分析に基づいて意見を示します。「JCRは甘い、S&Pは厳しい」と一律には判断せず、評価が分かれた理由を読みましょう。[9・10・13]

似た記号でも、評価の定義と対象をそろえて読む
見るところJCRS&P Global Ratings
長期格付けの記号AAA、AA、A、BBBなど。AA~Bに+・−を付けるAAA、AA、A、BBBなど。AA~CCCに+・−を付ける
一部の債務だけが不履行発行体格付けではLDを使用発行体格付けではSDを使用
発行体と個別債券区別して評価。回収可能性の違いなどで格付けに差が付く場合がある区別して評価。優先・劣後関係など、個別債務の条件も確認する
下の実績表との関係JCRの格付けへ、そのまま当てはめないS&Pの企業格付けを対象とする過去の統計

JCRは海外の国・法人なども格付けしており、「国内専用」という意味ではありません。S&Pの企業分析でも、事業・財務リスクに加え、グループや政府の支援などを検討します。どちらも記号だけでなく、格付理由を読むことが大切です。[9・13・14・15]

格付けを見るときは「誰が・何に・いつ」をセットに。

格付会社、対象となる法人・債券、評価日、見通しや格付け見直しの有無を確認します。同じ会社でも、劣後性などを理由に個別債券の評価が異なる場合があります。格付けは価格の安さや、円換算の利益を保証する指標ではありません。

格付けとデフォルト率を、期間で比べる。

ここでいうデフォルトは「法的な倒産」だけではありません。元利金の不払いのほか、財務が悪化した企業による、投資家に不利な条件での債務交換なども含みます。表は将来の破綻確率を予測するものではなく、信用リスクの違いを知るための過去の実績です。[14]

S&P格付け別・平均累積デフォルト率
世界の企業/1981~2024年/単位:%
期首の格付け区分1年3年累積5年累積10年累積
AAA0.000.130.340.67
AA0.020.110.280.65
A0.050.190.391.03
BBB0.140.671.362.86
BB0.563.125.7510.44
B2.9310.4615.6022.02
CCC/C26.1241.3246.5350.43

出典:S&P Global Ratings「2024 Annual Global Corporate Default And Rating Transition Study」(2025年3月27日公表)、Table 24、55~56ページから一部抜粋。2024年版の統計です。[14]

これは将来の確率や損失率ではなく、JCRの格付け・国債・個別AT1の元本削減確率へそのまま当てはめることはできません。0.00%も安全の保証ではありません。

BBBの「10年2.86%」は、毎年2.86%という意味ではありません。期間を延ばすと、信用リスクにさらされる時間も長くなります。長期債は金利変動だけでなく、その間の会社の変化も引き受ける商品です。

この表を読む前提:累積・格付け区分・損失率の違い
  • 累積の実績:各期間の平均累積率です。1年の数字を単純に年数倍したものではなく、発行体数を基準に、各年の集団を追跡して計算しています。債券の金額ベースではありません。
  • +・−をまとめた区分:例えばAにはA+・A・A−を含みます。Aだけの細区分の数字ではありません。
  • 0.00%も保証ではない:観測された過去の値です。将来もゼロとは限らず、標本の違いなどでAAAとAAの一部の値が逆転することもあります。
  • 損失率とは別:デフォルト後にいくら回収できるかは別の問題です。発生率だけでは損失額は決まりません。
  • 対象を広げて流用しない:JCRの格付け、国債、AT1の元本削減の確率には、そのまま当てはめられません。国債は対象が異なり、AT1には一般の企業債務と異なる損失吸収条件があります。

S&Pも、格付けが特定のデフォルト確率を意味するものではないと説明しています。集計方法と対象を含めて読むための表です。[14]

06 / 銀行債のランクを図解

同じ銀行の債券でも、
返済の順番は同じではない。

ここでいう銀行債は、銀行や銀行持株会社が発行する債券を広く指します。「銀行が販売する商品」の意味ではありません。代表的な違いは次のとおりです。

同じ発行体の一般的な清算時の優先・劣後関係

上ほど先に返済/下ほど後に返済

  1. 1

    シニア債

    一般の無担保債など。通常、劣後債より先に返済を受ける。元本保証はない。

    債務
  2. 2

    Tier2債

    規制上の補完的な自己資本に算入される、代表的には期限付きの劣後債。シニアより後。

    劣後
  3. 3

    AT1債

    その他Tier1資本に算入される、代表的には永久劣後債。Tier2より後。利息・元本に特別な条件。

    より劣後
  4. 4

    普通株式

    債権者への支払い後に残った財産を受け取る。株式は債券ではない。

    資本

預金・担保付債・優先株などを省いた概念図です。国の法制度、発行体、個別契約で関係は異なります。これは「損失が必ずこの順番でしか発生しない」という図ではありません。AT1等には、通常の清算とは別の元本削減・転換条件があります。[6・7]

最初に確認する3種類の違い
種類満期の目安特に読むところ
シニア通常は満期あり発行体、担保・保証、TLAC対象か、適用される破綻処理制度
Tier2代表的には期限あり劣後条項、実質破綻時の損失吸収、コールの条件
AT1原則、満期なし利払い停止・取消、元本削減や転換、コール、利率見直し

銀行の債券は預金ではなく、預金保険で元本が保護される商品ではありません。順位が上でも、必ず全額戻るわけではありません。[11]

「銀行」と「銀行の持株会社」も、別の発行体。

日本の大手金融グループでは、持株会社が発行する無担保シニア債にTLAC対象債があります。TLACは、危機時に損失を吸収し、事業の継続・再建を支えるための仕組みです。「シニア」と書いてあっても、銀行子会社が発行する債券と同じ契約とは限りません。[7]

事業を営む銀行子会社

子会社の債権者への支払いを先に考える

その上にある銀行持株会社

子会社から受け取れる価値・配当等に依存

このように、持株会社の債権者が子会社の債権者に実質的に後れる関係を、構造劣後といいます。上の順位図にTLACを単純に1段追加せず、まず「どの法人に貸しているか」を確かめるのが順番です。

07 / 名前より、条項を読む

AT1の3つの「思い込み」を
ここで解いておこう。

思い込み 01

「債券だから利息は必ず出る」

AT1では、発行体の裁量や規制上の条件により利払いが取り消される場合があります。取り消された利息が、後から必ずまとめて支払われるわけではありません。

思い込み 02

「銀行が営業していれば元本は残る」

自己資本の低下や当局の判断など、所定の条件で元本削減・株式転換が起こり得ます。通常の倒産手続を待たずに、投資家が損失を負う仕組みです。

思い込み 03

「初回コールが5年後なら、5年債」

AT1は原則として永久です。5年後等のコール日は、発行体が条件を満たして期限前償還できる日。投資家に、そこで元本を返してもらう権利があるという意味ではありません。

AT1・Tier2の適格要件と損失吸収:BIS Basel Framework CAP10。各国の実装・発行契約で条件を確認します。[6]

「満期」と「コール日」を混同しない
購入0年
最初の償還可能日5年

発行体が判断
当局承認等の条件

償還されなければ保有が続く

契約に従い利率見直し等
永久債には確定した満期なし

初回コール5年の仮定。例外的な償還条項がある場合も含め、実際の期日・条件は個別契約を確認。予定どおり返らないことをノンコール・延長リスクと呼ぶことがあります。

CoCo・AT1・劣後債は、完全な同義語ではありません。

CoCoは、所定の条件で株式への転換や元本削減が起こる仕組みを指す呼び方です。AT1は銀行の規制上の資本区分、劣後は返済順位の性質。分類の軸が違います。名称だけでなく、利払い・元本・償還の条項を読むことが大切です。

利回り表示が「コールまで」だったら?

YTCは、所定のコール日に償還されると仮定した利回りです。コールされない場合の保有期間や、その後の利率条件も確認します。

通常のコール付き債券で使われるYTWは、対象となる満期・償還条件の中で低い利回りを見る指標ですが、デフォルト等を除く計算です。「最悪でもこの利益が保証される」とは読めません。AT1の利払い取消や元本削減まで、ひとつの表示利回りで表しているわけではありません。[4・6]

実例:2017年、Banco Popularで何が起きた?

スペインのBanco Popularでは、2017年6月の破綻処理で、既存株式は償却。AT1は株式に転換したうえで全額償却され、Tier2は新株へ転換されました。その新株全体がSantanderへ1ユーロで移転され、銀行業務は継続しました。[8]

銀行の業務継続と、資本性商品への投資が守られることは別だとわかる事例です。特定の処理事例であり、すべての銀行債の回収率や将来の処理順序を示すものではありません。

08 / 「満期まで持つから大丈夫?」

満期まで持っても、
すべてのリスクは消えません。

通常の満期がある債券で、契約どおり支払いが行われれば、途中の時価が下がっていても、満期に額面が償還されます。満期保有で途中売却による損失を避けられても、時価変動や、より高い金利で運用できたはずの機会損失まで消えるわけではありません。次の条件も残ります。

  • 信用:発行体が約束どおり返せるか。損失吸収条項が発動しないか。
  • 買値:額面を上回る価格で買っていないか。利息込みの収益はどうか。
  • 通貨:外貨の額面が戻っても、円換算で元本を下回らないか。
  • 物価:同じ金額が戻っても、買える物が減っていないか。
  • 資金予定:満期より先に、生活費や買付資金として必要にならないか。

例えば、100万円が30年後にそのまま戻っても、物価が毎年2%上がる仮定なら、その100万円の購買力は現在の約55.2万円相当です。これは償還元本だけの比較で、途中の利息を含む総合収益ではありません。

債券投信・ETFには「自分の買値に戻る満期」はない。

投信・ETFの価格は、保有債券の時価や費用などを反映して変動します。一般的な継続運用型の債券ファンドは、償還された債券を入れ替えるため、保有し続ければ必ず購入元本に戻るわけではありません。満期を設定したファンドでも、償還価額の保証は別です。

銘柄を分けても、長期債ばかりなら金利リスクは残る。

分散型ファンドは個別企業への集中を減らせますが、長期・外貨・低格付けなど、共通する要因までは消せません。平均デュレーション、格付け構成、通貨・ヘッジ、費用を確認します。[5・12]

では、長期債を持つ意味はないのでしょうか?

長い期間の利率を固定したい、将来の支出時期・通貨と受取額を合わせたい、金利低下時の価格上昇も引き受けたい、といった目的では選択肢になります。

大切なのは、短期の現金代わりとして期待しているのか、長期の値動きを許容して持つのかをはっきりさせること。金利が下がっても、社債の信用スプレッドが拡大すれば、価格が期待どおり上がらない場合もあります。

09 / 買値・売値・支払総額を読む

既発債は、買う前に
「いま売る値段」も聞こう。

利回りを比較したら、次は実際の取引です。取扱証券会社に口座を用意し、オンライン画面または窓口・電話など、その会社の対応する方法で注文します。既発債の多くは証券会社との店頭取引(相対取引)で売買します。同じ債券でも、取引する会社・数量・時点によって価格は異なります。

「新しく発行する債券」と「すでに発行された債券」
種類買い方確認する条件
新発債募集期間中に、募集価格・条件で申し込む利率・発行日・満期・払込額・初回利子の調整
既発債取扱会社の在庫や提示価格を確認して買う残存期間・買値と売値・最終利回り・経過利子

「手数料が別途ゼロ」でも、取引コストはある。

同じ時点で示される顧客の購入価格は、顧客の売却価格より高いのが一般的です。この差が売買スプレッド。証券会社の取引コスト等は価格に含まれ、銘柄の流動性、市場環境、信用リスク、取引金額などによって幅が変わります。[16・19]

そのため、相場が動いていなくても、購入直後に売れば損失が生じる場合があります。幅が大きい債券ほど、短期間で売買する負担も大きくなります。売買スプレッドと、円・外貨を交換する為替スプレッドは別に確認しましょう。

経過利子は、前の持ち主の期間分を精算するお金。

利払日の間に利付債を買うと、通常は前回利払日の翌日から受渡日までの利息相当分を、買い手が売り手へ支払います。これが経過利子です。次の利払日には買い手が1回分の利息を受け取るため、保有期間に応じて精算する仕組みです。証券会社への手数料ではありません。利払日と受渡日が同じ場合など、経過利子が付かないこともあります。[18]

必要資金は「額面×購入単価」だけではありません。

買付受渡代金=額面×購入単価÷100+経過利子
売却時は、売却単価で計算した本体代金に、受取経過利子を加えます。別途費用等があれば、その分も反映します。外貨建てでは、決済通貨と適用為替も確かめます。

額面100万円でも、支払うのは103万円という例

年4%・半年払いの債券。半年利息2万円について、180日のうち90日が経過したと仮定すると、経過利子は2万円×90÷180=1万円です。

比べる項目顧客が買う同条件ですぐ売る仮定
提示単価(額面100あたり)102.0099.00
債券本体の代金1,020,000円990,000円
経過利子+10,000円+10,000円
受渡代金1,030,000円を支払う1,000,000円を受け取る

差は3万円。支払総額に対して約2.91%です。価格差3ポイントが、この仮定で1往復したときの差です。さらに2倍する計算ではありません。

説明用の仮定であり、実勢のスプレッド水準ではありません。同じ受渡日・経過利子で往復できると仮定し、時間経過・相場・為替変動・税・その他費用を除いています。実際の同日売却可否を保証しません。日数計算・利息の権利・税務上の扱いは商品等によって異なります。

そのまま次の利払日まで持ち、税引前2万円を受け取ったとしても、2万円すべてが購入後の利益ではありません。この例では1万円を経過利子として先に支払っており、単純な税引前の保有期間対応分は1万円です。

動かして理解する 03

買値・売値・経過利子を、ひとつの計算で。

円建て・半年払いの利付債を、同じ時点・同じ条件で売買すると仮定します。買値と売値は、どちらもあなたから見た単価です。

購入時に支払う合計1,030,000円
同条件で売却した受取合計1,000,000円
それぞれに含む経過利子10,000円
売買による差額30,000円
支払総額に対する差額の割合2.91%
次回1回分の利息20,000円

購入本体 1,020,000円 + 経過利子 = 支払合計。売却本体 990,000円 + 経過利子 = 受取合計。

説明用の計算です。半年利息=額面×年利率÷2、経過利子=半年利息×経過日数÷180。税・別途費用・為替・時間経過・相場変化は除外。実際の日数計算、端数処理、利息の権利確定や売却可否は銘柄・取扱先により異なります。利払日の経過日数は0に戻るモデルです。表示金額は1円単位に四捨五入します。

市場の参考価格で直接買うには、大きなお金が必要?

債券は店頭取引が中心で、機関投資家向けには大口の売買単位の銘柄もあります。株式のように、一つの注文板の価格がそのまま個人の注文に適用される市場を想像すると、実際の取引とずれる場合があります。

例えば、日本証券業協会の「公社債店頭売買参考統計値」は、額面5億円程度の売り気配と買い気配の仲値をもとに算出する参考値です。その値段で取引できることは保証されません。[17]

5億円は、すべての債券に共通する最低購入額ではありません。個人が小口で買える債券もあり、最低購入額・売買単位は銘柄や取扱会社によります。大口向け参考値と比べるときは、数量・時点を確かめ、仲値と顧客の買値・売値の違いを踏まえて、自分の取引条件での提示価格を確認します。

買うときは4ステップ、売るときは3ステップ。

買うとき

  1. 回号・ISIN等で銘柄を特定し、取扱いと最低購入額を確認。
  2. 複数社で取扱いがあれば、同じ銘柄・数量・時点の買値と売値を比較。
  3. 経過利子・為替・費用を含む支払総額と受渡日を確認。
  4. 条件を読んで発注し、取引報告書を照合。

売るとき

  1. 買取り可否・売却単位・提示価格の有効時点を確認。
  2. 経過利子を含む受取額と、必要なら円への適用為替を確認。
  3. 受渡日・出金可能日を確かめ、発注後の報告書を照合。

市場が混乱しているときなどは、買取りが難しくなったり、低い価格しか提示されなかったりする場合もあります。注文日と、実際にお金を使える日は区別します。[1・19]

10 / 読んだら、ここまで確認

購入前に、契約書の
8か所へ印を付けよう。

目論見書・契約締結前交付書面で探す言葉

1. 発行体・保証
正式な法人名/銀行か持株会社か/親会社保証の有無
2. 通貨・払込み
買う通貨/利息の通貨/償還金の通貨
3. 満期・コール
確定した満期/初回コール日/償還する側の権利
4. 利息の条件
固定・変動/見直し基準/支払停止・取消の条件
5. 順位・損失負担
シニア・劣後/元本削減・転換/TLAC等の扱い
6. 格付け
購入する債券の評価/格付会社/確認日・見通し
7. 実際の買値
購入価格/経過利子/表示利回りの前提/費用
8. 売却の条件
買取価格の出し方/売買単位/受渡日/売れない場合

書面を読んだら、前の章の「証券会社に聞く4問」を使い、具体的な支払額・受取額に落とし込みましょう。

近く使う

生活費・緊急資金

必要な日に使える円資金を先に確保。

条件を決めて待つ

予定のある資金

満期・換金条件を、支出日より手前に合わせる。

値動きを引き受ける

長期の運用資金

長期債・外債・社債のリスクを総額で管理。

購入時期や満期をずらす方法もありますが、短期債にすれば信用リスクが消えるわけではありません。満期が来るたび、再投資先の金利が下がる可能性もあります。株安に備える資金は、値下がり時に売却しないと使えない債券と分けて考えます。

最後に、8つの確認

自分用の確認欄です。安全性の採点や購入推奨ではなく、入力は保存されません。

確認済み 0 / 8

11 / 最後の「?」をほどく

よくある疑問。

米国債なら、長期でも安心ですか?

発行体の信用力と、売却価格・円換算額の安定性は別です。長期の固定米国債は米ドル金利の変化で価格が動き、円で使う場合はドル円も影響します。利息と償還が契約どおりでも、売却や円への両替で損が出ることがあります。

変動金利の債券なら、値下がりしませんか?

利率見直しによって金利変動の影響が小さくなる場合はありますが、信用スプレッド、為替、流動性、利率の上限・下限、見直しの間隔などは残ります。変動金利でも元本保証とは限りません。

債券が安くなったら、買い増せばよいですか?

まず、金利の変化なのか、信用力の悪化なのか、契約上の問題なのかを切り分けます。元本削減が近づいた債券や、資金繰りが悪化した発行体に買い増すと、集中リスクが大きくなります。価格の下落だけで割安と決めないことが大切です。

株が下がれば、債券は必ず上がりますか?

必ずではありません。インフレや金利上昇で株と債券が同時に下がる場合があります。不況時に国債金利が低下しても、社債の信用スプレッドが広がることがあります。さらに円換算の外債では為替が加わります。

金利が高い商品は、すべて避けるべきですか?

高い金利だけで良し悪しは決まりません。通貨、期間、信用力、順位、コールなど、何の対価かを分解し、その条件を自分の資金予定で引き受けられるかを考えます。説明できない条件が残る場合は、理解してから比較するのが順番です。

ゆずママから

利息の前に、
お金の帰り道を読む。

どの通貨で、いつ、誰から、どんな条件で返ってくるのか。そこまで見えて初めて、利回りの数字が自分の暮らしにつながります。

今日の一歩は、気になる債券の「満期」と「返済順位」を調べること。その次に「今、買う総額」と「今、売る受取額」を確かめてみてください。金利や為替が動いても待てるお金か、最後に家計の予定へ戻って考えましょう。

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